平凡

平凡

結婚生活

川上弘美と輝夜月

川上弘美の短編集「神様」。 そのなかに、「コスミスミコ」という登場人物が出てくる。 螺鈿の壺をこすると出てくる彼女は、 どうやら「チジョウノモツレ」から人から刺され、幽霊になったらしい。 しかしながら、彼女は愛らしい容姿をもち、 まったくもって…

猫好きの星、保護猫カフェに現れる「猫貴族」

夫婦揃って、猫狂いだ。 最近では、お気に入りの猫カフェを見つけ、 休日はいそいそと出かけている。 わたしたちが通っているのは、譲渡型保護猫カフェ。 保護猫、というのは、捨てられたり、野外で生まれたり、 そんなところを人間に保護された猫のこと。 …

春、自己紹介にかえて

春の休日、川べりを夫婦で歩く。 橋の上から水辺を見ていると、鯉たちが、餌を求めて寄ってくる。 わたしたちは、餌をやる気はない。 鯉たちはあきらめず、パクパクと川面に水紋を広げつづける。 「なんだか悪い気がするね」とその場を離れる。 次の橋からは…

突然の多チャンネル化

結婚してから、なんとなく仕事の調子が悪かった。 仕事の受注は順調なのだが、わたし自身、まったくついていけない。 常に振り回されている感覚があった。 夫は家事と仕事だったら断然、仕事を優先してねという。 夫自身も、休日は、家事を積極的にやる。 仕…

桜が好きかと聞かれたら、はっきりと答えられない

桜が好きか、と聞かれたら、はっきりと答えられない自分がいる。 電車に乗っていて、歩いていて、視界に飛び込んでくる、淡い、淡い、ピンク色。 白にほんのり紅を垂らしたような色合いが、ある日突然、公園を、校庭を、土手を埋めつくす。 若葉が芽吹き切る…

ダナンの長い夜、あるいは海外旅行保険には必ず入っとこうという話1

最初に書いておくと、けっこう長い。 今回は、海外旅行中、体調を崩し、 医者にかかった体験を、2回に分けて書く。 先に、1、2をあわせて伝えたいことをまとめると、以下の通りだ。 海外で体調を崩し、ヤバいと思ったら、さっさと保険を頼って医者にかかろ…

家事にエンタメ性を求めた者の末路

「今日こそこれをやろう!」 ババーン! と擬音が出そうな勢いで夫が差し出したのは、洗濯槽の洗浄剤。 「汚れがごっそり取れる!」「ワカメのようなものが浮いてくる!」とネットで評判の酵素系。 秘蔵の「シャボン玉石けん 洗たく槽クリーナー」である。 w…

変哲のない月曜日

変哲のない月曜日。 夫婦ともども、早めに仕事が切りあがった。 最寄り駅で待ち合わせ、いつもの中華料理屋に向かう。 梅雨の湿気に、気が早い真夏の熱気が混ざり合った空気は、ムッとしている。 この前、同じような偶然があって、仕事終わりに待ち合せたと…

眠れる自転車乗りたちの言い訳探しは続く

わたしたち夫婦の共通の趣味のひとつ、それがサイクリングだ。 わたしはクロスバイク、夫はロードバイクを所有している。 当然、2台の自転車は室内保管。 昨年の引っ越しに際しては、 保管場所が確保できる間取り・広さも条件となった。 生活スペースにそれ…

黄金の休日、黄金の長野・野沢温泉 その1

梅雨でくさくさするので、 今さらだがゴールデンウィークの話を。ゴールデンウィーク、我が家は長野・野沢温泉へ。 黄金週間は価格も黄金が常ではあるけれど、 なんと価格がふだんと変わらない宿を夫が見つけてくれた。 1泊2食付き8000円台。*1 これは行くし…

小さな継承

わたしは歌うのが好きだ。 と書くと、「歌が上手い」と連想する向きもあろうが、 事実はむしろ反対である。 下手の横好き。 つまり、わたしはいわゆる音痴なのだ。 謙遜で言うようなかわいいものではない。 本気の本気、今様に言うなら“ガチ”である。 さらに…

精算する男

もう梅雨も間近だけれど、少し前の話。 フリーランスの春といえば、確定申告である。 結婚以来、夫は毎年確定申告を手伝ってくれるようになった。 腰が重いわたしに再三、夫は「確定申告、だいじょうぶ?」と声をかける。 遅まきながら領収書を集めて渡すと…

異種族としての猫

最近はもっぱら、夫婦で看板猫のいる店巡りをしている。店では、猫と人間が、さまざまな関係をむすんでいる。 それを見るのも、看板猫巡りの醍醐味である。 ある店にいるのは、色柄そっくりな4兄妹だ。 店を訪れると、開店準備中にもかかわらず、店主は中に…

三つの顔をもつ男

猫に相対するとき、夫は三つの顔を見せる。 たとえば。 土曜日、映画を見て終電近くなる。 そんなとき、商店街を横切る猫の姿。 見慣れないハチワレちゃんである。 我々夫婦は、わああ、とおよそ中年と思えぬ声をあげて、猫を追う。 夫は前にちらっと見た猫…

夢の永久機関、その名は豆苗

鍋物ざんまいだった冬。*1 苦しまぎれの中華鍋に、豆苗を入れたときだった。 「豆苗って、家で栽培できるんだって!」と夫が興奮気味に言った。 好奇心旺盛な夫は、豆苗のパッケージをふんふんと読んでいた。 そして、「水につければ収穫できます」と、 ご丁…

近所のお祭り、その名状しがたきよろこびよ

近所の商店会が、何か小さな催しをやるという。 入場料に500円を取り、ちょっとした屋台で焼きそばやたこ焼き、焼き芋などを食べさせるらしい。 入場料? 手作りの会で、一律取るのだろうか。 そして、チラシを見ても、食べ物が有料なのか無料なのかわからな…

「家賃と同じぐらいの支払いでマンションが買えますよ」と人は言うけれど

近所で、中古マンションの出物があったという。 予定のない土日、じゃあ、ちょっと見に行ってみようかとなった。 我が家は基本、賃貸派だ。 ふたりとも、「ローンがあるうちは自分のものになったとは思えない」タイプなこと、 ローン(と修繕積立費、管理費…

服を贈る、ということ。あるいはユニクロでコートを買った話。

突然だが、我が家の夫は秋生まれ。 そしてわたしは冬生まれだ。 夫婦の結婚記念日は、覚えやすいよう、夫の誕生日にしてある。 秋冬といえば、何はなくともクリスマスだ正月だとイベントが多いシーズン。 そこに個人的な記念日まで加わっており、祝いごとが…

概念としてのかわいさ

夫婦揃って猫好きだ。 なので、外出中はあらゆる場所に目を光らせている。 どこに猫がいるか、わからないからだ。 猫を見つける秘訣は、「いる」と信じることだと思う。 「どう考えても車止めだろう」 「こんな道の真ん中に、猫がいるはずがない」 いくらな…

家事分担の我が家の秘訣、あるいは「あなたの家事は当たり前ではない」と思う話

「家事分担、どうしてますか」。 結婚後、よく聞かれる質問のひとつだ。 世間では、夫婦ともにフルタイムであっても、 妻が主軸で家事を回す、というイメージがまだまだ強い。 わたしのまわりでも、そういったカップルが多い。 性別役割分担に加え、長時間労…

流行っているのか、フラフープ

夫の同僚が、フラフープをやっているという。 男性だが大変細身で、ふだんからプロポーションには気をつけているものの、 「ここぞ!」というときは集中して回すのだそうだ。 「くびれができますよ!」。 なんと魅力的なことばであろうか。 テレビをつけたら…

「こち亀」が終わる

「週刊少年ジャンプ」に連載されていた 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」通称❝こち亀❞が、 連載40年をもって幕を下ろすという。 インターネットを見ていると、 「ちゃんと追いかけていたわけではないけれど、ショックが大きい」との声をよく見かけた。 夫も…

ソーダ水のようなしあわせ

今年の夏は、なんだか溶けそうだった。 例年に比べてそんなに暑かったわけではないけれど、 じりじりとした陽光にやかれていると、 自分の境界線がぼんやりとしてくるので、 「わたしはこれこれこういう職業に就いていて、 結婚していて、 いま、こういう仕…

羽毛布団を捨てる

羽毛布団を、捨てようと思う。 この布団を使うようになったのは、はるか昔、もう30年も前のことだ。 そのころ、わたしの実家は新築フィーバーにわいていた。 憧れのフローリング、 小さな玄関の吹き抜け、 そして子どもたちにとっては、念願のひとり部屋。 …

圧倒的魅力をもつ大人猫の、圧倒的不利さ

隣街を歩いていたら、保護猫の譲渡会をやっていた。 猫好き夫婦の我々は、ふらりと会場に立ち寄った。ところで、子猫のかわいさは反則だと、よく言われる。 しかし、個性がはっきりと出ており、落ち着いた成猫の魅力は、 猫好きにとっては正攻法で顔面一発ノ…

平穏無事な街

そぼ降る雨の日。 仕事に行くため、駅へ急ぐ。その途中、幼稚園児くらいの姉弟を連れた女性とすれ違う。 弟は「アイスの棒が~1本~アイスの棒が~」と、作詞作曲オレによる“アイス数え歌”を歌い、 姉は顎に傘の取っ手を乗せて歩けないか試している。 ふたり…

私たちの街、私たちの庭

まだ梅雨のころ。 夫婦連れ立って、引っ越しに伴う手続きをしようと家を出た。 いろいろ回ると合計10キロぐらいになりそうなので、夫はロードバイク、私はクロスバイクに乗り、久しぶりのサイクリングと相成った。 雨雲におびえながら、自転車をこぎ出す。 …

サラリーマンの妻って感じがする

夫が配置がえになり、帰宅時間が早い日ができた。 私もここ何日かは仕事が落ち着き、時間に余裕がある。 引っ越して台所も広くなったので、副菜をよぶんに1、2品作ったりしている。 そろそろ帰ると、夫からの連絡。 料理を仕上げにかかっていると、鍵を回…

引き渡しの日

引き渡しの日がやってきた。今まで借りていた部屋を引き払い、空の状態にして、 オーナーや管理人の立ち会いのもと、部屋の状態を確認して、その管理下に戻すのだ。空っぽになった部屋を見ていると、はじめて内見した日のことを思い出す。 なんて日当たりが…

猫、挨拶にきたる

引っ越しである。 契約、電気ガス水道各種移転の手配、引っ越し屋への依頼を済ませ、 たまりにたまっていた不要な資料を捨て、 使わないものからパッキングをし、 それらをどう積み上げつつ生活をするか考え、 冷蔵庫のストックを使い切るべく頭を悩ませる。…