平凡

平凡

2018-01-01から1年間の記事一覧

ガチ恋ダメ、ゼッタイ!

「ガチ恋」。 それはアイドルファン界隈の用語で、「アイドルを恋愛対象とする」ことを指す。 ところで、猫カフェの猫は、“会いに行けるアイドル”だ。 小屋(猫カフェ)に入場料を払えば、アイドル(かわいい猫)たちに会える。 猫との接触(なでる)も可能…

猫はカリカリのみにて生くるものにあらず

自分勝手で、ふだんは人間のことはどうでもよい、という顔をしている猫たち。 しかし、そんな猫たちでさえ、 「猫はカリカリのみにて生くるものにあらず」と感じさせる瞬間がある。 昔、実家で飼っていたのは、典型的な“猫”だった。 さわられるのは大嫌い、…

義母の庭

庭は生き物だ、と思う。 育てたように育ち、記憶をもつ。 そして、愛された生き物は、見る者に幸福をもたらす。 6月。 降りしきる雨に、紫陽花が濡れている。 水色、青、紫、赤紫、ピンク。 こんもりと手まり型になったものや、 つぶつぶとした花を装飾花が…

結婚に期待しすぎてはいけない

言葉とは、化石燃料のようなもの。 “資源”だと思う。 独立したばかりのころ。 わたしは、アルバイトをしていた。 今までになかったレベルの 経済不安定さに頭をガツンとやられたから。 というのも、もちろんある。 しかし、もうひとつ大きな理由があった。 …

いつもの料理が、急にみすぼらしく見えて

母の体調がすぐれないというので、週末、実家へ帰る。 食欲はあるという母のために、料理を作ることになった。 母はひとり暮らしになって4、5年経つが、 それまでずっと家族の食卓を支えてきた。 誰かのために料理を作りつづけてきた彼女は、 自分のためだ…

片づけられない人間が見つけた限界片づけ術

この記事は、本当に、本当に、片づけられない人に向けて書いている。 もはや気力がない、どうしていいかわからない人に向けて書いている。 本当に片づけられない――というか、片づける気力がわかない人間にとって、 「どう取りかかるか」が最大の問題だ。 世…

母の人生

わたしは、ふつうになりたかった。 いまは、フリーランスで仕事をしていて、結婚していて。 自分なりの“ふつう”を手に入れたと、そんな気がしている。 わたしの母は、「父と結婚したのは失敗だった」とよく言っていた。 実際、そう思う。 父は悪人ではない。…

アルパカ純度100%! 那須アルパカ牧場

那須アルパカ牧場。 その名の通り、アルパカしかいない牧場。 そこでは、11万平方メートルの広大な敷地に350頭のアルパカ*1が暮らすという。 アルパカ牧場 那須ビッグファーム ゴールデンウィークに念願のアルパカ牧場に行ってきたので、 そのすばらしさを紹…

牧場

青々とよく茂った牧草。 それを踏み分けながら、ロバが走ってくる。 ウマ科の動物が走る様子など、日常生活ではまず目にしない。 夕陽に照らされ、ノスタルジックな映画のワンシーンのようだ。 やがて、ボエッボエッボエッと、苦し気に聞こえる鳴き声が響く…

クロスバイク買ったら、ツイ婚できた話

突然だが、我々夫婦はツイッターで出会い、結婚した。 いわゆるツイ婚だ。 そのきっかけとなった転機といえば、 自転車に乗り始めたことか。 2011年の春。 わたしは突然、クロスバイクを買った。 周りの人は皆、驚いた。 わたしはインドア極まったタイプだか…

夫の死角

トロピカル模様の、派手派手なスリッポン。 ラクだし、季節感もあるし。 昨年の夏は、そればかり履いていた。 今年もそろそろ暑くなり、スリッポンの出番となった。 ところで、平凡家での小さな出来事として、 「夫ルームパンツ看破事件」というものがある。…

フリーランスはクレジットカードの審査に通るのか?

クレジットカード審査。 フリーランスにとっては、ちょっとした恐怖だ。 「平凡ちゃんはさー、いつまでそのクレジットカード使うわけー」 と、夫がじりじりと迫る。 わたしがうっかり「今使っているクレジットカード、年会費がかかるんだ」と口を滑らせて以…

ゴースト・イン・ザ・スマートフォン。あるいはiPhoneとモバイルSuicaとビックカメラSuicaカードの話

春。 はじまりの季節。 新しいことをしようという気力がむくむくとわきあがり、 スマートフォンを変えた。 ついでに、ポイントを貯めやすいクレジットカードも作ってみた*1。 スマートフォンは、androidからiPhoneに。 クレジットカードは、「ビックカメラSu…

川上弘美と輝夜月

川上弘美の短編集「神様」。 そのなかに、「コスミスミコ」という登場人物が出てくる。 螺鈿の壺をこすると出てくる彼女は、 どうやら「チジョウノモツレ」から人から刺され、幽霊になったらしい。 しかしながら、彼女は愛らしい容姿をもち、 まったくもって…

猫好きの星、保護猫カフェに現れる「猫貴族」

夫婦揃って、猫狂いだ。 最近では、お気に入りの猫カフェを見つけ、 休日はいそいそと出かけている。 わたしたちが通っているのは、譲渡型保護猫カフェ。 保護猫、というのは、捨てられたり、野外で生まれたり、 そんなところを人間に保護された猫のこと。 …

あのころ、カヒミ・カリィがわたしのアイドルだった

驚いた。 こんな世界があるのかと思った。 20年近く前、春休み直前のころだったと思う。 東京からの転校生が、こう言った。 「カヒミ・カリィって知ってる?」 「えっ、カヒミ……何……?」 耳慣れない名前を、何度か聞き返したことを覚えている。 なんでもその…

止まったときを、宝箱に閉じ込めるように

お気に入りの中華料理店が閉まるのだという。 噂は本当なのか? 半信半疑で平日の昼、足を運ぶ。 冬のこととはいえ、磨りガラスごしに日光がたっぷりと入り、店内は暖かい。 長テーブルの一角に座り、ラーメンを注文する。 わたしのほかには、ビールを手にザ…

春、自己紹介にかえて

春の休日、川べりを夫婦で歩く。 橋の上から水辺を見ていると、鯉たちが、餌を求めて寄ってくる。 わたしたちは、餌をやる気はない。 鯉たちはあきらめず、パクパクと川面に水紋を広げつづける。 「なんだか悪い気がするね」とその場を離れる。 次の橋からは…

「親なるもの 断崖」と大相撲

「親なるもの 断崖」という漫画がある。 昭和初期、北海道・室蘭の遊郭に売られた少女の人生を描く作品だ。 幼いころは親に従い、結婚しては夫に従い、老いては子に従い、 女性に安住の地はないという成句「女三界に家なし」があるが、 親に売られた女性たち…

「月曜日の友達」があまりにもすごくて、読むたびに感情が無茶苦茶になってしまうけれど、がんばって感想を書く

人が、子どもから大人になる瞬間。 その脱皮の痛みとうつくしさ。 それを全2巻で描き切った作品が、「月曜日の友達」だと思う。 1巻書影。 「月曜日の友達」は、阿部共実による漫画作品。 連載誌は、「週刊ビッグコミックスピリッツ」。 中学に上がったばか…

旅の記憶

オーストリアの首都、ウィーンに降り立ったのは、5月も終わりのことだった。 旅の計画はこうだ。 オーストリアから南ドイツのミュンヘンへ。 そこから少しずつ北上、 北端の海辺の町まで到達したら南下して、 フランクフルトからパリへ抜け、帰国。 航空券の…

突然の多チャンネル化

結婚してから、なんとなく仕事の調子が悪かった。 仕事の受注は順調なのだが、わたし自身、まったくついていけない。 常に振り回されている感覚があった。 夫は家事と仕事だったら断然、仕事を優先してねという。 夫自身も、休日は、家事を積極的にやる。 仕…

3月の夕焼け

「もう、こんな夕焼けも見られへんのやなあ 」。 その日、兄はそう言った。 わたしたちの眼前には田んぼが広がり、その先には青い山影。 そこへ、大きな夕日が沈もうとしていた。 わたしたちはその日、ママチャリに乗って、あてもなく国道沿いを走り、 大き…

わたしたちの、静かな時間

「あー、だいぶ伸びちゃってるねー」。 そう言いながら、いっちゃんはわたしの髪に、鋏を入れる。 床に、パサッ、パサッと毛が落ちる。 ずいぶん年季の入ったコンクリートの床は、ところどころ黒い塗装がはげている。 代官山のはずれにある小さな美容室には…

桜が好きかと聞かれたら、はっきりと答えられない

桜が好きか、と聞かれたら、はっきりと答えられない自分がいる。 電車に乗っていて、歩いていて、視界に飛び込んでくる、淡い、淡い、ピンク色。 白にほんのり紅を垂らしたような色合いが、ある日突然、公園を、校庭を、土手を埋めつくす。 若葉が芽吹き切る…