平凡

平凡

餅は餅屋。ギアは専用を買えって話

餅は餅屋。

専用の道具は身を助ける。

そんなことを実感したのは、かつて富士山登山をしたときだった。

準備のために足を運んだアウトドアショップで、店員は言った。

「無理強いはしませんが、運動不足で体力がない人ほど、ギアの恩恵は大きいです。靴や下着、雨具だけでも専用のものを揃えることをおすすめします」

そのことばには説得力があった。

「どうせ一回限りだし、なるべく代用するのがスマートなのでは」と思っていたわたしも気が変わり、

結局、レインウェア上下、吸湿放湿速乾にすぐれた下着、トレッキングシューズなどを買い揃えたのだった。

体力がないわたしにとって、たしかにそれらの恩恵は大きかった。

雨が降ったら透湿性の高いレインウェアをさっと羽織れば蒸れることもなく、汗をかいても快適に体温調整ができ、足首までしっかり覆われたシューズにより、凸凹道でもしっかりと踏みしめて歩くことができた。

 

「体力がない人間ほど、専用のギアを使ったほうがよいこともある」

 

そんな教訓を噛みしめながら、無事に頂上まで登ることができた。

 

 

で、現在。

3週間ほど前のこと。

3泊4日の出張取材が決まった。

出張自体は好きだ。

知らない土地へ行って、はじめてのものを見て、体験する。

それを「どうやって書こうか」と考えるのは、心が躍ることだ。

 

ただ、その準備となると、とたんにめんどうくさくなる。

わたしは在宅稼業のフリーランスライターであり、ふだんの外出が少ない分、持ち歩きに適したものが少ないのだ。

 

その筆頭が、ノートPC。

わたしはメインのマシンとは別に、持ち歩き用に12インチの小型PCを持っている。が、動きがもっさりしていて使えたものではない。

もう何年も買いかえようと考えているが、後回しになっている。

とはいえ、夫はまだまだそのPCをメインで使っているので、なんとなく現役感がある。

 

買いかえを後回しにしても済んでいるのは、外出中の仕事をほとんどスマートフォンBluetoothキーボードですませているからだ。

ノートPCはなるべく持ち運びたくない。

専用バッグに収納してリュックに入れればそれなりにかさばるし、重いからだ。

 

3か月ほど前に1泊2日の出張に出たとき、その持ち運び用ノートPCの調子が激烈に悪くなって使えないことがあり、いよいよ買いかえを決意した。

 

中古PC屋をのぞいて、とにかく軽量のモデルを選ぶ。

中古かつおそらく法人向けモデルなので詳細はわからないけれど、重量は1キロは切っている。

とはいえ、元のPCは1.2キロだから、その差はわずか300~400グラム。

あまり期待していなかった。

 

ついでに、チャックが壊れはじめたリュックを買いかえることにした。

店をウロつくうちに一目惚れしたリュックには、ノートPC専用の格納スペースがあった。

というか今どきのリュックには、8割ぐらいの確率でノートPC格納スペースが設けられている。

店員さんの許可を得て、買ったばかりのノートPCを突っ込むとすっぽり収まるので、即決購入。

リュック自体もなかなか軽い。

 

新しいリュックに新しいPCを入れ、旅行カバンにその他もろもろ着替えを詰め込んで出張に出たところ、これが信じられないぐらい快適だった。

ノートPC専用の格納スペースがあると、緩衝材がわりのPCケースやバッグがいらない。

それだけでPCが占拠するスペースが小さくなる。

すると、不定形のためどこに入れても邪魔になる洗顔&化粧ポーチがラクに入るのだ。

連鎖して、旅行カバンの荷造り難易度も下がる。

そのリュックはわりとカッチリした形なので、書類がとても入れやすく、取り出しやすい。

何よりすべてが軽く感じられる。

たぶん、リュックの形状や軽さ、ノートPCの軽さ、両方があわさってのことだろう。

 

体力がない人間にとって、軽さの恩恵は計り知れない。

出張の楽しさを時に上回りかねない疲労をも、ずいぶん軽減してくれた。

帰宅後、「仕事とはいえ、楽しかったなあ」とまじりっけなしの感想を抱いたのは、社会人経験で初のこと*1

 

ひさびさに、「体力がない人間ほど、専用のギアを使え」の教訓を思い出したできごとだった。

 

こんなにラクになるなら、リュックだけでももっと早く買いかえればよかったと思うものの――。習慣は恐ろしい。

「まだ使えるし」「使い慣れているし」で、現行のリュックが壊れるまで、新調は思いつきもしなかった。

 

こういうことは、暮らしの中にまだまだあるのではないだろうか。

靴は? 服は? 在宅の仕事環境は?

ちょっとした変化でラクになれること。

あるいは、ちょっとしたことがつっかえになって、本当は大好きなはずなのに、ストレスが勝っていること。

もっとラクになれる方法はないか、鈍いわたしなりに頭を巡らせている今日この頃である。

 

画像は写真ACよりお借りしました。《

新緑と麦わら帽子の女性 - No: 24318155|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK

*1:リュックやノートPC以上に、実はリングフィットとウォーキングでの体力づくりも大きかったと思われる