平凡

平凡

みんなで作るのって楽しいね

協同作業ができない。

ひとに歩調を合わせたり空気を読んだりができないからだ。

これは一匹狼でやったるぜい! ということではなく、単純にいろいろ足りないものが多いのだ。

お互い個性が強いであろうアーティスト同士がコラボレーションなどしていると、「すごいな。やはり才能ある人は、人とコミュニケートできるのだ」と思う。

 

 

ところでわたしはライターをやっており、ゴールデンウィーク前のこの時期は、大規模な物撮り撮影が入ることが多い。

物撮りとは字の通り、「モノを撮影すること」。「物撮り撮影」は重複表現であるが、わかりやすさ優先ということで許されたい。

 

「物撮り」当日のおおまかな流れはこうだ。

撮影するモノをスタジオに集めて、編集さんとカメラマンさんが構図を決める。

そこにスタイリストさんが加わることもある。スタイリストというと洋服のイメージが強いけれど、テーブルコーディネートやフードのスタイリングをするプロフェッショナルもいる。これはライターになって理解した。

スタイリストさんは、あらかじめ聞いていた撮影内容に合わせて、お皿や果物、小道具を用意してくる。大荷物から次々といろいろなものを出して、使用イメージが伝わる小粋な「絵作り」に貢献する。

構図が決まると、次々と撮影していく。少しアバンギャルドな置き方をしてみたり、光の加減で立体感を強調したり。カメラマンさんは適宜背景やライティングを変える。それを手伝うアシスタントさんの動きは尋常ではなく速く正確だ。

 

ライターのわたしは、商品チェックがメインの仕事だ。紹介する商品を手に取って、質感や形、色をたしかめる。原稿の“素”としてファーストインプレッションをメモするため、ノートには「ここのくびれの形、優美! 優美! ゆうび! どうやってんのこれ?」「透明感が透明! すげー透明」とどうしようもない文言が並ぶ。必要あればサイズを測って控える。

実物を見ることは大切だ。それに加えて、「実物をよりよく見せる写真」が目の前で撮られていくプロセスを目の当たりにすることで、インスピレーションが湧く……こともある……かもしれない。

 

ライターの仕事がそれだけのこともあるけれど、たいていは撮影物の荷解きや梱包も手伝う。撮影が終わったものを過不足なく揃え、丁寧に包み、宅配便で返却するものは伝票を書く。撮影が終われば、編集さんと手分けしてずんずんとそれを進めることになる。

 

協同作業ができないわたしが、唯一「みんなでいっしょに作っている」と感じられるのが、こういった大規模な撮影時だ。

編集さんのディレクションのもと「すてきなもの」をセレクトし、ほうぼうから集める。そのすてきなものを、スタイリストさんやカメラマンさんが腕によりをかけて魅力的に見せる構図を考え、撮影する。わたしはそのすてきさをたしかめ、メモをする。

すてきなものが無事に帰路へつき、ほんとうに愛でてもらえる場所へ旅立てるよう、みんなで頑張って梱包をする。

 

こういうときに思い出すのはカフェ取材のことだ。

コーヒーに力を入れている店の方は、たいてい「わたしたちはいちばん川下だから」と言う。

コーヒーは豆がどんな農園でどう栽培されているかがまず大切。いらない豆をピッキングするにも技術がいる。焙煎も味への影響が大きい。その豆を挽いて、抽出して、お客さんにお出しする。

「コーヒーが飲まれるまで」という名の川では、生産者が川上、カフェはもっとも川下なのだ。

川上から真ん中までみんなでバトンをつなぎ、よい豆をさらに美味しくしてきたのだから、川下でしくじるわけにはいかない。

「わたしたちはいちばん川下だから」は、そういった覚悟と誇りがにじむことばだと思う。

 

一方、わたしが関わる「物撮り」はどうか。集めるモノは、たいてい職人さんが丁寧に作ったとか、アーティストの方々が技術と感性を注ぎ込んだとか、そういうものだ。素材自体も天然の何かをものすごい時間をかけて加工したものや、日本で何人しか加工できない何かを使っているなどが多い。

それをよりよく見せる。すてきなものをすてきに見せて、読者に「こんなふうに使いたいなあ」と思ってもらえるようにする。物販の川下には、「ショップで魅力的に見せる」というメインストリームがある。わたしたちがやっている仕事は、川下のいわば支流だ。プロが集まってひたすらそれぞれの仕事をして、川上からの流れをより加速させる。

協同作業ではあるけれど、川沿いにそれぞれが立ち、作業をしている感じ。だからわたしにも流れが見えやすいし、心地がよい。

 

川の支流にはつづきがあって、撮影後、編集さんは画像をデザイナーさんのところへ持って行ってレイアウトを作る。わたしは撮影時にメモした内容をもとに「なぜこれはすてきなのか。どのようにすてきか」が伝わるよう、原稿を書く。そうして「雑誌記事」という川の支流は河口までたどりつく。河口で待っているのは読者だ。

 

わたしはこの、「ひとつの魅力的なものにそれぞれでスポットライトを当て、盛り上げる」という仕事が好きだ。

その楽しさを素直に書いたところ、タイトルが小学生の作文のようになってしまった。

 

体力ゲージ極少のライターとしては疲労困憊するけれど、それでも物撮りはやっぱり――ええと、やっているときはモノが揃うか、この仮止めは取って撮影していいのかなどなど気をもむけれど――終わってみると楽しいと思う。

カフェの方々のように覚悟と誇りを持てているかはあやしい。でもやっぱり、写真を見て、文章も読んで、「うっひょ~! 世の中にはすてきなものがあるなあ!」と思ってもらいたい。

川下で、モノに光を当てて魅力を見せる「スポットライト係のひとり」になれたら幸せだなと思う。

 

写真は《飛魚の仙ヶ淵(景勝地)のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20200545133post-27394.html

川ということで……