平凡

平凡

他人のルーティンを聞いて、己の特性を知る。そんなこともありますね

ジャージで仕事してえなあ。

 

会社で仕事をしていたとき、常に考えていたことだ。

ことに最初に勤めた会社は保守的な気風があり、編集業がメインだったものの、オフィスカジュアル程度の服装が求められた。

わたしは社風に合わせているつもりで、冬ならツイードなどの柔らかい素材のワンピースにベロアのジャケットぐらいは羽織って出社した。

そんな服装でも、肩が凝るものだ。

ストッキングやタイツは常に脚にはりついているし、ワンピースの下によく合わせていたタートルネックのカットソーは体にぴったりとしたタイプで窮屈だ。

当時の服装の流行は、いまよりもシルエットがタイトだったように思う。

ゆったりとしてそこそこきちんと見えるスタイル、というものは一般的ではなかった。

オフィスでは、化粧の感触やにおいも気になった。

外出時はよいのだが、デスクワーク中は常ににおいがしていることに気を取られた。

 

次に勤めたライターばかりの会社では、服装規定は緩やかだった。

それでも女性ばかりの職場に触発されてそこそこおしゃれをしていくと、わりあい肩が凝るし肌ざわりもよくないし、とにかく気がそがれる。

やっぱり取材があるとき以外は、いっそジャージを着たいなあ……。

夜中残業するときは、こっそり着替えちゃおうかなあ……。

 

そう思いつつ、フリーランスになった。

はちゃめちゃな生活の中での唯一のルーティンが、「起きたら仕事前に服を着替える」だ。

着替えるといっても、デスクワークに集中できるよう、極力ラクなかっこうをしている。

ポイントは締め付けがないこと、肩がこらないこと。

肌ざわりが気にならない素材はマスト。肌ざわりがよければなおよし。

わたしはビシバシ緊張して仕事モードに切り替えるよりも、安心感の中で心身を安定して取り組みたいほうなので、肌ざわりがよいとパフォーマンスは上がりやすい。

 

仕事着の定番は、ワッフル素材のワンピースか、無印良品の画家が着ていそうなコットン素材のシャツワンピース。

またはGUのシェフパンツにスウェット。夏はリラコにお気に入りのTシャツ。

人から見たら寝巻から寝巻に着替えているような日もあると思うが、本人的には寝るときに快適な服装と、仕事のときにラクな服装は違うのである。

 

会社員時代に憧れた「ジャージで仕事」だが……。

ラクではあるが、あまり肌ざわりがよくないので、ジャージは仕事着として採用には至らなかった。

 

家での仕事中は、化粧もしない。

昔は「これってどうなの」と思っていたし、たまに「これではいかん」とメイクをすることもあった。

でもやっぱり、顔に何か塗っていると、気を取られてパフォーマンスが落ちるのはたしかなのだ。

 

おしゃれは我慢と昔はよく言った。

服装やメイクに手をかけないと、どんどん雑になるのは事実。

ラクなほうに流されているのもたしかだが、窮屈さには耐えられない。

気になることを極力排した状態で、キーボードを叩いていたい。

 

もちろん外での取材やインタビューがある日は、そこそこきちんとしたかっこうをするようにしているし、化粧もするし整髪料もつける。

 

そんな風に楽ちんフリーランスを満喫して数年どころか10年以上。

コロナ禍の影響で、さまざまな会社、業種で在宅勤務が一般的となった。

皆が在宅勤務に慣れてきたころ。

「仕事をするには、なんだかんだ気持ちの切り替えが必要なので、スーツで仕事をするようになった」といった声を複数見かけた。

会議が多い職種など、仕事の違いもあるのだと思う。

それでも、わたしにとってそう考える人がいることは驚くべきことだった。

そして、ふと気がついた。

 

「スーツやオフィスカジュアルでデスクワークをすることに、それほど苦痛を覚えない人も多いのかもしれない」

 

ボサ髪ノーメイク在宅稼業自営業者としては、目がさめる思いであった。

 

仕事中の服装の好みは、わたし自身のちょっとした特性によるものだろう。

窮屈な服装は、みんな窮屈なことには変わりがない。

変わりはないけれど、わたしは人よりちょっとだけ苦手度が強い。

 

というわけで冷え込みが強くなった今は、GUのシェフパンツとUNIQLOのスウェットに身を包み、キーボードを打っている。

UNIQLOのスウェットは、色によって肌ざわりが若干違う。

何年か前に買った、この褪せたブルーの一着はムニムニとしていい感じなのだ。

中年女性にとって、あまりにもカジュアルな服装ではある。

おしゃれな人が着れば違うのだろうが、わたしはとくにセンスがよくはない。

「寒いから」と履いていた靴下は、窮屈に感じて脱いでしまった。

これからの季節は、冷えるのは嫌vsできれば開放的に裸足でいたいよ~のせめぎ合いだ。

こんな人間がよくタイツとパンプスを履いて、10時間以上も会社でデスクワークができたものだ。

 

そして、ここまで書いて思うのであった。

自分は、なるべくしてフリーランスになったのだな。

 

いろいろなことを標準に合わせようとは、もう思わない。

快適にパフォーマンスを高めることに注力し、苦手なことは自分を責めるのではなく、テクノロジーで対応する。

締め切りを守ることに苦労するなら、ポモドーロテクニックで時間感覚の弱さを補う。

出かける用事がある日は、「用事の開始時間」のほかにも、「外出準備」をはじめる時間、「家を出る」時間もGoogleカレンダーに入れておく。

そういった工夫のひとつに、服装がある。

 

そうだ、今年は機能性防寒肌着も、ヒートテックよりもゆったりしたものを探してみよう。

肌にぴったりしていたほうが保温効果が高そうだが、あれはなかなか肩がこる。

ラクと快適さには貪欲に勤勉に。

それがわたしのワークスタイルだ。

 

今週のお題「マイルーティン」

 

画像は《資料を見ながら検討する上司と部下の女性のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210451112post-34452.html

こういうスーツで働いている人はすごいと思います。