フリーランスのライターです。自営業です。在宅稼業です。
職業に関して自己紹介をするなら、そんな感じでしょうか。こんにちは、平凡と申します。
「フリーランスな働き方」が世間で(一部)もてはやされることがありますね。Twitterなどで検索すると、「フリーランスとして必要なのはブランディングである」などなどのアドバイスがたくさん引っかかってきます。
フリーランスとひと口に言っても、製造業もデザイン業もサービス業もあるでしょう。書籍だけ、文房具だけなどの特化型PRをフリーランスでやっていらっしゃる方もお聞きしたことがあります。
「独立したい」と考えたとき、必要なことは職種によりさまざまなはず。
ただ、フリーランス歴15年のわたしが、つねづね「あまり言及されないけれど、これは職種を問わず、絶対にあったほうがいい」と思っていることがあります。
それは、人とのつながりです。仕事以外の。
「仕事以外の」と書きましたが、これは意味を広く取っています。たとえば会社勤めしている場合は、業務以外の会話や同僚の存在感もここに含まれるとわたしは考えています。
というのも、独立したときに愕然としたのは、日常会話が激減したことだったからです。
会社にお勤めの方で、職場での日常会話がまったくない、口をきくのは業務連絡だけ、というケースはあまりないと思うんです。プライベートな付き合いではないけれど、職場を、仕事を共有している人たち――。それが同僚であり、彼ら、彼女らとの会話はいわば「基礎人付き合い」であったとわたしは気づきました。
なくなってはじめて、それらがどれほど貴重なものだったか身に沁みたのでした。当時は独身でひとり暮らしでしたからなおさらです。
そのころ、わたしは20代後半から30代でした。周囲には出産する友人が多く、そうするとプライベートで会えることも減ってきます。
これ自体は誰にでも起きる普遍的な変化ですが、フリーランスだとベースが違うんですね。朝から晩までひとりでいて、職場での「基礎人付き合い」がない状態で、さらにプライベートの付き合いも減ってくる。
人付き合いがないと、刺激も情報も減ります。驚くほど減ります。同僚が何を着ているかをぼんやりと見る。今日は元気があるなあ、元気がないなあ。そんなちょっとした変化を感じる、それだけですでに刺激なのです。
もちろん、その刺激が居心地の悪さやトラブルを生むこともあるのですが。
ついでにいうと、通勤がないとやっぱり刺激が激減します。独立前、わたしは職場から徒歩10分以内の場所に住んでいましたが、それでも毎日、外に出て道行く人を見るだけでも違うのです。
フリーランスになって減るのは「人とのつながり」と書きましたが、もうすこし正確に表現すると、「外部からの刺激」全般です。
製造業の方など、人との協業が前提になる職業の場合は、独立しても定期的な人付き合いがあるかもしれません。
同業者でも、「編集さん、カメラマンさん、同業者、またはPRの方々と半プライベートで仲良くなっている」という方もいます。また、ご近所付き合いなど、職場以外の「基礎人付き合い」がある方もいらっしゃるでしょう。そういった方はあまり心配いらないと思います。
ただ、
・メインとなる作業がだいたい在宅で完結する職業
・もともと人付き合い、コミュニケーションが苦手
こういった条件を兼ね備えている方は、独立にさいして、外部からの刺激をどう摂取するかを考えたほうがよいのでは……というのがわたしの考えです。なぜならわたしがそうだから!
刺激の摂取方法は、コワーキングスペースの利用かもしれないし、犬の散歩かもしれないし、習い事かもしれないし、ジム通いかもしれないし、Twitterかもしれません。
そして、プライベートのお誘いで苦痛でないものは、極力大切にする。
「リアルで・定期的に接触があって・そこそこ深さがる」付き合いでなくても、広く浅くでいいのです。チャネルや所属していると感じられるコミュニティを意識して複数持っておくことが大切だと思います。
また、対人接触を伴わずとも、「ニュースは必ず見る」「自分の職業と関連あるショップには週に1度は足を運ぶ(わたしだったら書店)」といった、外部刺激の「窓口」を決めておくのも有効だと感じます。
苦痛や無理があるものはつづきません。自分が楽しくできる範囲で、外への窓口を確保すること。先に挙げた2点に当てはまる人は、ほうっておくと年々閉じてしまいます。いったん閉じたものをこじ開けるのはなかなか大変です。
そして、独立して仕事が軌道に乗ってくるほどに、窓口を開くための「すき間」を作ることが難しくなってくる瞬間があります。
独立前は何かと不安になるものですが、納期を守って、遅れるときはきちんと連絡してまじめにやっていれば、多忙になる可能性のほうが高いです。
独立前にあれこれ準備する必要はないと思いますが、できる範囲でいいので気をつけておくと、「死守ライン」のようなものがわかるのではないか。外への窓口を開け続けられるのではないか……と思っています。
わたしは……「わたしはこうしてるよ! こうやってバッシバシに外に開いているよ!」と言えたらカッコいいのですが、残念ながら閉塞との戦いに悪戦苦闘中です。
時間の使い方が下手なので、せっかくお誘いいただいた貴重なオンライン飲みの機会を逃すことも多かったり……。
そして、あまり言及されないということは、閉塞で悩んでいるのはフリーランス界隈でもわたしぐらいなのかもしれません……とほほ。
考えてみれば、会社員の方は「基礎人付き合い」があった上で、勉強したり刺激を受けるよう努力したりしているわけで、在宅稼業者ならなおのこと努力が必要、という話でもあります。
というわけで、ひょっとしてとても局地的な必要性かもしれないけれど――。
わたしが考えるフリーランスに必要なものは、「人や外部とのつながり」でした。
写真は《古びた窓枠と植物のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20171156317post-14010.html》
ちなみに結婚はこういった閉塞感の解決方法にはならない……という話がこちら。子どもがいると、また違うのかもしれません。