書きたい! 書けない! 途中の展開に詰まってしまう!
ブログだろうが小説だろうがエッセイだろうが、「書く」につきものの悩みの数々。
そんなとき、「とりあえずそれっぽい文章」を提案してくれるサービスがあったら……?
というわけで、今回は小説生成AI「AIのべりすと」の紹介です。
「AIのべりすと」は「Bit192 Labs」*1のStaさんがひとりで作り上げた、自動で文章を生成してくれるサービス。
開発経緯、どうやって文章を生成しているか、何ができるかはこちらによくまとまっています。
【AIのべりすとインタビュー】小説を書くAIをひとりで作った日本人がいるらしい | オモコロ
サービス開始は2021年7月なので、ご存知の方も多いかもしれません。
これ、自分の文章を「そう来たか!」という方向に進めてくれてとってもおもしろいんです。
サイトもサービスにとってもシンプルなので、やってみたほうが早い!
ひとつ注釈を入れておくと、「AIのべりすと」の名前通り、生成されるのは基本的に小説文体です。
しょっぱなは、自分のブログから。
「雪の日、北陸、甘い水。 - 平凡」の冒頭を使って自動生成してみます。
画像がちょっと見えづらいですが……。
元文章は冒頭の一節(以下)を使っています。
《年明け早々、北陸に大雪の予報が出た。「明日は飛行機が欠航します。電車も欠便の予定……」ニュースを聞いてマジかよ、と思う。次の日は、北陸のカフェへ取材に行く予定だったからだ。あわててカフェ、編集者、カメラマンへ連絡を入れる。「雪ならしかたない」とみな納得してくれ、再セッティングが叶った。》
「AIのべりすと」はおまかせの「デフォルト」、台詞優先して多めにしてくれる「台詞」、地の文優先の「ナラティブ」があります。まずは「デフォルト」。
画像が見えづらいので文字にすると、以下の内容。
《翌日は、早朝から除雪作業に追われるスタッフたち。俺はといえば、「どうせ今日は仕事にならないし、早めに行って店を手伝うぞ!」と思いつつ、なぜか足取り軽く金沢駅へ向かった。駅に降り立つと、視界一面真っ白で、何も見えない》
スタッフが除雪作業している! 北国舞台のお仕事小説がはじまりそうな予感です。「俺」はライターか何かをしていて、金沢郊外に住み、親はお店をやっていて暇だと手伝いに行くのかな? とか想像がふくらみます。
次は「台詞」。
《「じゃあ、俺も行きます!」と同行を申し出たのは、俺より2つ下の後輩だった。
「えっ、お前仕事大丈夫なのか?」
「なんとかします!先輩一人だけ行くなんてずるいですよ!」
「まぁ……そうだけど》
「デフォルト」との違いがわかりやすいです。主人公が元気な後輩と旅に出そうになってる! なんとなく主人公と後輩のキャラクターも伝わってきます。
もっともブログのつづきっぽかったのは、やはり「ナラティブ」。
《しかし翌日は、予想以上の大雪で、新幹線はもちろん、在来線も軒並み運休になった。朝からずっと、携帯電話を気にしながら仕事をする。夕方になり、ようやく携帯が鳴った。電話に出ると、》
これは普通にありそう。
画像では切れちゃってますが、下に「続きを書く」ボタンがあって、気に入ったらどんどん書かせることができます。
では、はじめっから小説っぽいものをほうりこんで生成してみましょう。古の自作小説の冒頭から。
主人公が列車に乗ってとにかく南へ向かっている、というはじまりです。文章のはしばしに気になるところはありますが、目をつぶって!
まずはお任せの「デフォルト」から。
《僕は、そんなことよりも、僕自身の心の奥底から湧きあがってくる、わけのわからない衝動に従っているだけだ。
「おい」
と、誰かが僕の肩をつつく。
振り向くと、そこには、真っ白な顔色をして、目の下にクマをつくった中年男が立っていた。男は、僕の隣の席に座っていたのだが、いつの間にか眠っていたらしい。
「おまえ、どこに行くんだ」
男は、そう言いながら、目をこすっている。どうやら、今、目が覚めたばかりらしく》
これ、自分が書いたつづきは、「この旅がいかに先行き不透明かを主人公が述べ、やがて心臓発作かなにかを起こした人に巻き込まれて列車から転がり落ちる」展開なんですね。
内容は違うのですが、「主人公の独白→他者との関り」といった流れは同じ。小説のよくあるパターンを学習している……。
ただ、男の動きがどうなっているか、ちょっとわからないところがあります。
次に「台詞」。
《だけど僕は、どうしても行かなくてはならないのだ。
***
僕の名は、小鳥遊練無。
年齢は十七歳。高校三年生だ。
身長は百七十センチ、体重六十八キロ。
好きなものは、猫と犬とチーズバーガー。嫌い》
なんとキャラクター名と設定が出てきました。こういう出だし、ありますよね。ややドラマチックな状況を書いていったんポーズを置き、主人公が基本スペックから自己紹介をはじめる。
「台詞」優先にすると、ライトノベルやエンタメ小説っぽい雰囲気の文章が生成されます。
「ナラティブ」
《しかし、そんなことはどうでもよかった。僕はとにかく、この列車に乗りこむことだけを考えて生きてきたのだ。そして、いま、ようやく、その列車の中の一番前の車両までたどり着いたところだった。あとはこの扉の向こう側に飛び込みさえすればいい――。しかし、そのとき扉の前に》
わたしは釣られやすいので、ふつうにワクワクしました(笑)。なんで「続きを書く」を押さずに終わってしまったんだ!
冒頭に「スシ詰め」と書いてあるので、車両を移動するのは矛盾するものの、「車両を移動する」発想はなかったので、これは新鮮でした。
「AIのべりすと」は、同じ文章をほうりこんでも生成のたびに内容が異なります。今日やってみたところ、「デフォルト」は以下。今日は複数回試したのですが、何度やっても「海」が出てきました。(下線部が生成部分)
《夜の闇を切り裂くように、汽笛が鋭く響く。暗い顔をした人々をスシ詰めにして、列車は、二月の寒空の下を駆けぬけてゆく。行き先は、ただ、“南”だ。その列車に乗って、開けっ放しの扉のすぐそばで、かろうじて手すりにしがみつきながら、僕も“南”を目指している。
この列車が本当に“南”へ行くのか、そもそもこんな苦行に近い旅をしたところで“南”に良いことがあるのか、誰も知らない。しかし、とにかく、僕は、そうするしかないのだ。
あの夜、僕は、確かに、見たのだ――。
「……あ」
気がつくと、僕は、列車の中に立ち尽くしていた。さっきまで乗っていたはずの乗客たちは消え失せ、代わりに、窓の外には見渡す限りの海が広がっている。海沿いの道を走っているらしい列車の窓からは、青々とした水平線がはっきりと見える。車室の天井からぶら下がった蛍光灯が車内を照らしているのだが、どうにも薄暗くて、あまり明るいとは言えない。
それに、なんだろう。どこか違和感がある。何に対してか》
『銀河鉄道の夜』っぽいです。あとね、読点が多すぎるところもトレースされています。複雑な気持ち……。
最後に、これも自作小説の冒頭。絵本っぽい短文が続く物語。スタイルの模倣はかなり忠実。AIすごい!
※※以下、海難事故の描写があります。ダメージを受けそうな方は画像最下部まで飛ばしてください※※
画像切れちゃっているのですが、1~3では、病気の友人に対し、「死んだらあなたを棺に入れて海に流す」と他の友人たちが約束しています。
節立てのナンバリングも踏襲してくれています。
自分が書いたものは「AIのべりすと」と近い展開になるのです。自分の発想って……という気持ちになります。
今回はボタンひとつの生成だけを試しましたが、「文体をどこまで真似るか」「禁止ワードの設定」「基本設定をセッティングできる『脚注』」なども設定できます。
最後に、気になる著作権ですが……。
「AIのべりすと」で生成した文章は、利用規約に反しなければ自由に使えます。入力した文章が新たな学習に使われることはなく、消去されるとのこと。
ただし、大量の文章から学習しているので、公表する作品に使用する場合は、以下の点に注意が必要です。
《AIのべりすとは構造上、学習したデータの一部をそのまま出力することがある。特に人名などの短いフレーズについては既存の小説に登場するキャラクターの名前がそのまま出ることが多い。
意図せず著作権を侵害してしまうこともありうるため、発表する前に検索して事前チェックしておくことをおすすめする。》
ちなみにわたしが試した文章に出てきた「小鳥遊練無」は、森博嗣さんの小説の登場人物名。女装が好きな男の子でした。
どんな文章をほうりこんで、どんな使い方をするかは人それぞれ。「AIのべりすと」を試しているほかの方のブログをチェックしたとき、そのあたりを見るのが楽しかったんですね。そこで、今回は「わたしの遊び方はこうだよー」と紹介してみました。
わたしはいまのところ、ここで生成された文章を実用に使ったことはありません。単純にほうりこんでみるだけでも、「意外な発想」が得られたり、自分の文体ってこんな感じなんだウワーと思えたり、いろいろおもしろいです。
未体験の方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
画像は《プログラミング画面とキーボードのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210915263post-36804.html》
*1:Staさんの個人プロジェクト名。ゲーム、音楽、映像などを制作されています