平凡

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ライター意外と書かない問題。じゃあ何やってんの? って話

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ライターになったとき、いちばん驚いたことは――。

「意外と書かないなっ!?」。

ライターにもいろんな種類の仕事があるので一概に言えないですが、一般的な(紙媒体の)雑誌記事の場合、「書く」って作業ははほんの一部なんですよね。一般的な雑誌記事とは、ちょこちょこ情報が入って構成されているようなやつです。

では、ライターは何をしているのか。

たとえば「2022年家電マストバイ予測!」という記事があったとしましょう。企画名は適当です。カラー4ページ。楽しい記事にしたいですね!

 

 

構成を決める

まずどうやって構成するか。これは編集者と考えることもあれば、編集者からほぼ決まったものが下りてくる場合もあります。打ち合わせして、以下のような構成が決まります。

「最初の2ページは、家電に詳しい人5人に出てもらって、『2021年キテた家電』『2022年来る家電』を各1つずつあげてもらう。5人は芸人、家電評論家、ブロガー、家電量販店の人、家電好きのタレントなど、できるだけジャンルバラバラで」

「次の2ページは、製品紹介。主だった家電メーカーの人に2022年の自社の売れそうな家電を聞いたり、『ユニーク家電』『IoT家電』など、ジャンルでくくって、新しくておもしろい家電を紹介しよう。製品は全部で12個ぐらい。最初の2ページの家電とは重なりはNG」

 

※※※これ、わかりやすいよう、ちょっと極端で、古い例をあげています。今作るとしたら、構成が変わると思います。とくに最後の2ページはこんなにカタログ的にしないはず。理由は「時代の変化」に。※※※

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打ち合わせのときに描いてそうなラフ。上手いラフではないですが、イメージということで



人選

商品を選んでくれる家電に詳しい著名人5人の選定。打ち合わせで候補が出ることもありますが、持ち帰ってライターが考えたりまとめたりが多いです。類似企画や直近で見たテレビ番組、ネットなどで情報収集。5人を選定します。

 

アポとコメント取り

5人それぞれの連絡先を見つけて、企画書を送り、出てくれるかどうか打診。芸能人なら、事務所の代表番号にアタックから開始です。最近では、ブロガーさんとかインスタグラマーさんとかに、メールで打診することも増えました。お返事ない場合、「いかがでしょうか」と電話かメールで追いかけます。断られたら次の人を編集さんと相談、打診。

書面取材の場合、同時にアンケートを作成。何をどう聞けば効果的な回答をいただけるか、ちょっと頭をひねります。

出てくれるとお返事をくれた人から順に、「こんな家電を教えてほしい」とアンケートを送ります。企画によっては、直接お会いして話を聞きに行く。

 

商品画像を集める1

最初の2ページに登場する家電の画像を集めます。メーカー広報に電話、または問い合わせフォームから連絡。企画書を送って、商品のオフィシャル画像を集める。5人×各人2つの家電なので、10個。家電だとメーカーは重複するので、連絡先はせいぜい5~6社でしょうか。

 

商品を決める

最初の2ページで紹介するものが決まったので、後半に掲載する商品の選定。このときも、だれかナビゲーターを付ける(「家電メーカー5社が選んだ」とか「家電量販店のカリスマ店員に聞く」とか)なら、その人に取材申し入れ。自分たちで選ぶなら最初2ページとの重複を避けつつ、商品を選定。

 

商品画像を集める2

「商品画像を集める1」と同じ要領で、メーカーに電話。画像を送ってもらうようにお願い。全部で12個紹介するとしても、家電なら連絡先は多くて7社ぐらい? 最初の2ページとかぶっているメーカーもあるでしょうし。

これ、他のネタならぜんぶバラバラの会社に連絡する可能性もあります。そうなると、全4ページで22社に連絡することになります。

 

デザインを依頼

デザインを先に出す場合、ここで画像を揃え、何をどう配置するかざっくり決めて(ラフ)、デザイナーにデザインを依頼。

 

このとき、

「今年は“ちょい進化型”に注目!

専門家に聞いた! 2022年最強家電マストバイ!」

とか、タイトルをフィックスさせることが多い。

このラフ出しやタイトル決めは多くの場合、編集者がやります。

週刊誌の場合など、「表紙に記事タイトルを入れる必要がある」とか、今はもうなくなりつつありますが、「中吊り広告にタイトルを入れる」とかで、タイトルはとても重要なファクターです。

 

デザインアップ→書く

文字数が決まり、いよいよ原稿を書きます。この記事なら、家電の説明のちょこちょこした原稿が多いよ~、ひ~ん、といったところでしょうか。このとき発揮されるのが、以前書いた“ハコ”にする技術です。

hei-bon.hatenablog.com

流し込み

レイアウトに原稿をはめこみます。昔はデザイナーの作業でしたが、いまは編集者やライターがDTPソフトでやることも。

原稿チェック

5人の識者、各メーカーなどに、「原稿チェックしてね」と送ります。今はメールで送れて便利です。昔は全部プリントアウトして、FAXでガーコガーコと送ってました。ただ、いまも「FAXのほうがすぐ見られて便利」とFAXご希望の先もあります(たまに)。ごくまれに、郵送してと言われることもあります。10年に2件ぐらいかな……。

FAXご希望の先方は、たいていスマホもPCも使いこなしています。ただ、オンタイム中は立ち働いて忙しい業態なので、パッと見たいからFAX希望ってことが多いです。

校正

自分でも間違えがないかチェック。識者やメーカーから戻ってきた修正を反映。わからないところや、「先方は修正希望しているけど、ここは反映しづらい」などあったら、都度ヒアリング。先方が「ニュアンスを変えてほしいけど、どう伝えていいかわからない」と思っていることも多いので、丁寧に聞きます。家電メーカーだとそういうファジーなことはまずないですが、雰囲気重視のお店紹介とかだと、「電話してはじめて、先方が本当に修正したい内容がわかる」ことがあります。

 

校正2

いわゆる再校。修正が反映されているかチェック。

 

色校

写真の色合いを確認。主に編集者がチェック。

 

献本リストを作る

雑誌ができあがったら、お世話になった人に雑誌を送ります。コメントもらった人や、家電を紹介させてもらった人の住所を聞き、リストにまとめます。

 

できあがり!

自分の手元にも雑誌が送られてきます!

 

まとめ

こういった記事の場合は、ひとつの仕事を100としたら、20が選定、40が手配、10が書く、30がチェック(校正)って感じでしょうか。

インタビュー仕事はもっと違う感じになりますし、数ページにわたってひとつのスポットを紹介するような記事でも、また変わります。そっちだと、「書く」仕事の比率は多め。あと、外で撮影する必要がある記事だと、その手配が入ります。

Web記事だと、スクロールする性質上、こんなに細々詰め込ま(め)ないので、構成自体まったく変わってきます。

また、どこまでをライターの仕事にするかは、編集部や仕事にもよりまちまちです。本当に「書く」しかやらない仕事もあります。

 

時代の変化

そして、最初に書いたのですが、この例はおそらく、いささか「古い」です。とくに最後の2ページ、今はこんなにカタログ的にはしないはず。家電の情報は、Webで収集できますからね。今やるなら、家電好き著名人の対談&アンケートに変わり種をあげてもらってそれを拾って紹介とか、あるいは注目家電の「使ってみた」比較とか、とにかくもっとひねるはず。

わたしがライターになったばかりのころ、編集さんは「こんな薄い情報じゃダメ。ネットに負けちゃう」と言っていました。今はさらに変わってきていて、「自社のネット媒体に流用してPVが稼げる記事」を狙う傾向が強くなっている気がします。Webと紙媒体は、単純な競合ではなくなっている。わたしの仕事の傾向が変わったのかもしれませんが、“読み物”的な記事が増えているようにも感じます。

先にも書いたように、一般的なWeb記事だと、お店紹介でもなんでもあるていどまとまった文章が基本になります。

今のほうが、総合的にライター仕事における「書く」比率は上がっているかもしれませんね。

 

 

以上、誰得情報なのですが、ライターという仕事についてもっと知ってほしいなあという気持ちもあり、書いてみました。あくまで、わたしの体験内です。

Webからキャリアを発進したライターさんにとっては、ライターはもっと「書く」仕事なんじゃないでしょうか。わたしは絶滅危惧種の紙媒体主戦場ライターなので、ちょっと記録しておきたい気持ちもあります。後進の役には立たない情報ですが……。

ただ、「調べて、素材を集めて、それについてまとめる、紹介する」ライティングの基本は、きっと媒体や時代で変わらないはず。その一例としては、わかりやすいかなと思います。

 

「ライター意外と書かない問題。じゃあ何やってんの?」の答えは、「手配手配手配手配してるよ!」でした。

 

写真は《デクワーク中のノートとキーボードのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210950249post-36526.html