平凡

平凡

それでもEvernoteは埋まっていく

最初に断わっておくと、ここには生産的なものは何もありません。あるのは中年の叫びだけです。

 

はてな匿名ダイアリーに、「結婚してない、子供いない、仕事で自己実現できていない中年はどう生きるべきなのか」というエントリーが上がっていました。気になる方は検索していただくとして、大筋はタイトル通り。齢30後半でないない尽くし、人生むなしくなる、というもの。わたしは結婚していますが、わかる部分もあって複雑な気持ちで読みました。

 

ただ、どうにもこうにも一部が引っかかったのです。ほんとうにごくごく個人的で、主題にはあんまり関係ない部分なのですが。

 

匿名ダイアリーの主は書きます。

《「生産的な趣味を持て!」とか言われるだろうけど、生産的な趣味で承認されるほどのスキルがあったらこんなことで悩んでいないのよ。

今まで何もしてこなかったおっさんが急に生産的な趣味に目覚めても、周りの生産性との差を自覚して惨めな思いするだけでしょ。

孤独なおっさんが誰にも承認されずに趣味に生きてなにが楽しいのよ。》

 


ここでいう「生産的な趣味」とは、創作系でしょうか。漫画、音楽、文章などなど。

おい、と思うわけです。そういう趣味は、承認されようがされまいがやっちゃうのよ。拙くても作っちゃうのよ。そう言うと、「じゃあ好きこそものの上手なれでしょ」とわっくわくされがちだけれど、そんなことはないのよ。当然、惨め。惨めですよ。

WEBじゃ承認されてるものばかりが目に入るけれど、そんなの氷山の一角なのです。

 

そして、こういうエントリーの反応につきものの「ヘンリー・ダーガー」の名前(ブックマークコメントをご覧くださいまし)。

「承認を求めず創作してみては」とすすめる意味で挙げられがちなのでしょう。

ご存知の方も多いでしょうが、ヘンリー・ダーガーとは、だれに見せることもなくえんえん絵物語を綴り続けた男性で、生涯独身。

没後、大家によってその作品が見いだされ、アウトサイダー・アート(美術教育を受けていない者が生み出した芸術作品)の第一人者として名前が知られるようになりました。

81年の生涯の中、約60年間をかけて『非現実の王国で』という物語をつむぎ、そのボリュームはテキスト1万5000ページ以上、挿絵300枚。

 

でもね、わたしは思うのです。たぶん、ヘンリー・ダーガーになれなかったヘンリー・ダーガー未満の人間は世界にたくさんいるのです。その多くの作品は拙くイタく、作品が見つからず捨てられたらいいほうで、発見されたら「キモ」とやっぱり捨てられてしまうのです、きっと。ヘンリー・ダーガーは見出され、そして非凡だったからこそヘンリー・ダーガーなのです*1

自分より一生懸命研鑽を積んできた自分より上手い人なんてゴロゴロいて、差を自覚して惨めになる。そんなことばっかです。うん、わかる、匿名ダイアリーの主はこんなふうになりたくないので近づかない。賢いのです。

惨めでむなしくて何かを生産しているのに非生産的な気持ちになって、でもやりたいからやっちゃうのです。それだけ。承認がほしくないかと言ったら嘘になる。それでも今日より明日はマシなものをお出しできるようになりたい。誰の役にも立たなくても。それでも、誰かに届いたら死ぬほどうれしい。

たぶん、創作的な趣味ってそういうもので、あんまり生産的じゃないのです。少なくともわたしにとってはそうです。同時に、ああいうこと書く人ほど、「人並みにアニメ、漫画はたしなんでいる」と言いつつすごい量をインプットしていて、作ってみたらできちゃった~☆ってことがあるんじゃないのおおおって思ってしまいます*2。妬み深い人間です。

こんなこと書いてること自体がイタいと思いつつ、なんだか叫びたくなってしまったのでした。

Evernoteに現在進行形で黒歴史がたまっていってるんだよ~~~!!! 惨めだよ~~~!!! でも楽しいんだよ~~~!!! そういう人間もいるんだよおおお。

というわけで、子どももいないし、努力不足の結果なんもないけど、惨めに楽しく生きてる人間もいるんだよって、心の叫びなのでした。

ああ、イタいイタい。 

 

写真は《ここを通りたければ煎餅だせや!のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20220325060post-39139.html

鹿っていい顔しますよね。

*1:人に見せずに研鑽し、人を魅了するものを作り上げるのはたぶんすごく難しいので、ダーガーはそういう意味でも非凡なのだと思います

*2:うだうだ言ってないでなんか作ってみろよおおおお、匿名ダイアリーで1000ブクマいけるんだから!  いけるいける! きっと楽しいぜ!