いきなりだが、「推し」だ。
はてなブログの特別お題が、「推し」なのだ。
「『推し』の魅力を伝えませんか?」だと!?
「推し」はいる……!
ガチ恋していた……!
いた……!
過去形だッ……!
秋。
お気に入りの保護猫カフェをひさびさに訪れた我々夫婦に、衝撃が走った。
「なんて不思議な猫ちゃんたちなんだ!?」
よく似たふわふわ大型長毛猫2匹が、追いかけっこしている。
が、なんだか動きはドタドタ。
店のすみにたどり着いた2匹は、なぜか立ち上がって相撲を取った。
そこはポカスカやるもんじゃないの?
猫パンチ的な。
なのに、立ち上がってもみ合っている。
なんだか2匹の巨大怪獣のよう。
ただし、動きはひどくのんびりだ。
店に行けない間も、その保護猫カフェのブログやTwitterは、こまめにチェックしている。
当然、その2匹が新しく入ったことも、仲がよいことも知っていた。
ただ、やはり実際会ってみないとわからない。
遊んでいても、店を歩いていても、2匹には2匹の世界がある。
猫というより、森に暮らすもふもふ妖精のようなのだ。
こんなに個性的だとは思いもしなかった。
おもちゃで1匹が遊び始めると、もう1匹も遊ぶ。
猫らしい活発さはある。
が、猫のすばやさ、みたいなものはあまり感じられない。
よいしょ、と両手を揃えて下ろし、おもちゃを捕まえようとする。
他の猫に、「なぜ、いま?」と言いたくなるタイミングで、鼻をすりよせて、若干引かれることもある一方、
子猫にすり寄られて、嫌がるでもなく相手をするでもなくスタスタ歩いて行ったりもする。
とにかくマイペースなのだ。
きわめつけは、1匹が店のカウンターで寝始めたことだ。
業務日誌を下敷きにして眠る、というのはどの猫もやることだが、とにかく起きない。
ほかの猫が来ても、目を開けもしない。
スタッフさんがついに爪を切り始めたが、それでも起きない。
猫の飼育に興味がある人ならよく知っていると思うが、猫は基本、爪切りが嫌いだ。
猫についての説明で、「お爪切りもできます♡」と書いてある場合、なんというか、相当人間に協力的な猫ちゃんである。
スタッフさんが全爪を切り終えても、その猫はついに目を覚まさまなかった。
細かいことが気になりがちな現代人の我々が、真に必要とするもの。
“鈍感力”ということばでは足りないほどの、何にも動じず、気にしない力。
それを、この猫たちは持っているのではないか――。
とにかく、まぶしかった。
2匹が気になったので、一時期は店に日参し、そこで原稿を書いたりしていた。
こんなにかわいいのだから、もう2匹には「うちの子に」と声がかかっているのだろうか。
わたしが通っている店は「譲渡型」なので、在籍している猫たちは、基本的に家族募集中なのだ。
そのユニークなキャラに、常連はもちろん、新規の客も虜になっている(ように感じる)。
気になる……。
しかし、仮にうちに迎えたとして、2匹を幸せにできるのか……。
一緒に暮らすことを夢見る状態。
ある日の退店時、「最近、よくいらっしゃいますね」と店員さんから声をかけられた。
……と言えればよかったのだが、実際は「えへへ、ひ、頻繁ですね……」と曖昧に笑って店を出るのみ。
なんたるコミュ障!
しかし、もう5年ほど通っている店のスタッフさんともちゃんとコミュニケーションが取れないのだ。
そんな人間が、仮に猫を迎えたとして、なんとかやっていけるのだろうか。
そんなこんなで迷っているうちに、新たな推しとなった2匹の卒業が発表となった。
卒業、それは里親さんが決まったということ。
通常、トライアルから正式譲渡とステップを踏むが、わたしが通っている店では、トライアルでご破算になることはめったにない。
猫の生は人間より短いのだから、よりよい環境に行けるのは、一日だって早いほうがいい。
だから、はてなの「特別お題」に正式に応募することはできない。
なぜなら、「タイトルにあなたの推しの名前をわかりやすく入れてください」とあるからだ。
2匹は里親さんと暮らすのだし、新しい名前になるかもしれない。
店にいる猫ではなくなるのだから、名前を出すわけにはいかないのだ*1。
せめて、推しの魅力を伝えよう、覚えておこうと思い、記事にしてみた。
2匹の卒業まであとすこし。
なんとか会いに行き、「幸せになってね」と伝えたいと思っている。
写真は《上を見上げる二種類の猫のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210803243post-36484.html》