平凡

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マンガ好きもヒューマンドラマ好きも……老若男女におすすめの作品『ナビレラ』

マンガ好きが敬遠しがちなウェブトゥーン(縦読み漫画)。

しかし、このたび、従来型のマンガもたくさん読んできた! 見開きがあるマンガしか勝たん! という人にもおすすめしたい作品を見つけたのです!

その名は『ナビレラ』。

2021年3月からNetflixでドラマが配信中なので、ご存知の方も多いかもしれません。

その原作ウェブトゥーンです。

今回はネタバレなしで、その魅力をお伝えします。

 

piccoma.com

 

ドラマ版『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』の紹介(シネマトゥデイ

韓国ドラマ「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」キャスト&あらすじ【まとめ】|シネマトゥデイ

 

 

 

『ナビレラ』とは?

 

『ナビレラ』は、ひと言でいうと「70歳の男性がバレエを始める話」。

「ナビ」は韓国語で「蝶」を意味し、「蝶のように羽ばたく」という意味合いのタイトルだそう。

 

舞台は韓国。

70歳のシム・ドクチュルは郵便局を定年まで勤めあげ、現在は妻と二人暮らし。3人の子どもたちは中年にさしかかり、孫にも恵まれている。

そんなシムには長年の夢があった。幼いころに見て、心を奪われたバレエをやってみたい――!

家族の猛反対を受けながら、小さなバレエ団の門を叩いたシム。そこで才能に恵まれ、有望だが伸び悩んでいるバレリーノ(バレエの男性ダンサー)イ・チェロクと出会う。

バレエ団の団長は、シムの入門を許可するにあたり、ある条件を提案する。シムはチェロクのマネージャーを務める。チェロクはそのかわり、シムにバレエを教える。

 

国立バレエ団に入団して兵役を免れたいが(韓国の話なので)、ケガもあって崖っぷちのチェロク、23歳。

一方で、70歳にして肉体を極限まで使って表現するバレエをはじめたシム。

歳の差50才近いふたりの、奇妙な師弟関係の行方は……。

 

歳の差50才のふたりが築く、唯一無二の絆

 

これはもう「読んで!」としか言えないのだが、『ナビレラ』がすばらしいのは、まず明るい雰囲気ながらも、「老い」「衰えること」「失っていくこと」を正面からとらえている点。

何しろ物語はシムの親友の葬儀から始まるのだ。

何もかもを失っていくなかで、人間は何ができるのか。実直一筋でやってきた70歳のシムが老いのなかでもがき、夢であったバレエに打ち込む姿は、それを教えてくれる。

 

シムのその姿を間近に見ることになるのが、師匠となったチェロク。

諸事情で父と距離があり、ひとりで生活費を工面しながら稽古に打ち込んできた彼は、胸に抱えるつらさを誰にも打ち明けることができない。

そんなチェロクと弟子・シムの関わりは、師弟のようであり、友人、父子、祖父と孫のようでもあり……。

お互いに支え、支えられ、シムは老いと、チェロクは夢への不安と向き合い、前へ進んでいく。

 

彼らの行動は、まわりの人たちにも変化を起こしていく。

読み進めるうちにシムもチェロクは当然のこと、シムの家族も、バレエ団の面々も、嫌味だった金髪元サッカー部野郎でさえも、愛おしくて愛おしくて応援したくなってしまう。

 

巧みな絵&画面構成

 

年代を問わず懸命に生きた者だけが見せる、強く美しい光。

そしてその光は他の誰かの魂を照らすこと。

何よりそれを雄弁に物語るのが、絵の力だ。

物語と強く結びついたバレエシーンは圧巻。

圧倒的な画力と、縦のスペースを目いっぱい使った画面構成に目を奪われる。

作中、「バレエのダンサーたちは踊りで物語る」という台詞があるのだが、それを体現している。

なかでも物語のハイライトである24話と56話は最高にドラマチック。

 

ピッコマのキービジュアルはリアル路線だが、本編の絵はポップでか親しみやすいもの。

適宜にコマを使った演出も上手いので、ふつうのマンガと同じ感覚で読むことができ、かつ、縦スクロールなのでスマホで読みやすい。

絵柄、内容ともに「日本の青年誌に掲載されているヒューマンドラマ」のような感覚で読むことができる。

 

『ナビレラ』は完結済。

ピッコマのスマホアプリでは、「待てば0円」区間が「広告を見れば1日5話無料」となっており、追いかけやすい。

PC版ならブラウザ上でも読めるので、ぜひぜひまずは開いて! 読んで! と念を込めてこの記事を書いている。

ナビレラ|無料漫画(まんが)ならピッコマ|HUN JIMMY

 

この作品、本国・韓国では紙書籍が発売されている。

表紙も美麗!

shop.k-plaza.com

 

ボックスセットも販売されているっぽい。ボックスセットの裏表紙のチェロクがめっちゃかわいいんじゃー!

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日本語版も出して! ムキー!

 

余談

『ナビレラ』を読んだのは、この対談ですすめられていたから。

ウェブトゥーンは「売り上げ」か「従来型のマンガとの勝ち負け、優劣」でしか語られないことに、わたしは常々疑問があった。

日本のマンガ界で活躍し、ウェブトゥーンにもかかわった編集者ふたりが、「大事なのはタテかヨコかではなく、ストーリーとキャラクター」と語るこの対談は腑に落ちるものだった。

対談は前後編。リンクは『ナビレラ』が紹介されている後半部分。

「マンガは林業」…ベテラン編集者がウェブトゥーン業界に伝えたいこと 武者正昭×江上英樹(飯田 一史) | マネー現代 | 講談社

 

画像は《手のひらの黄色い蝶(紅葉した銀杏の葉)のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20171238353post-14558.html

本来は秋の写真素材ですが、本物の蝶は苦手な方もいるので、無難なこれで……。