平凡

平凡

わたしがスピッツを好きな理由

いまから書くのは、スピッツの音楽性「以外」についてだ。ミュージシャンを語るうえで、「音楽性以外」なんて失礼千万だけれど。

ここのところ、しばしばスピッツのことを考える。いや、スピッツは現役バリバリ。「ここのところ~しばしば考える」なんて書くのも、やっぱり失礼千万なのだけど。

 

f:id:hei_bon:20220305020923j:plain

 

スピッツの名を一躍世に知らしめた大ヒット曲「ロビンソン」*1がリリースされたのは、わたしが思春期のころだった。スピッツは、「青春とともにあった」感覚がもっとも強いバンドだ。

文章を進める前に断わっておくと、スピッツの楽曲は好きだ。とても。メロディも、歌詞の世界や、ことばの選び方も。楽曲がすばらしい……間違えなくすばらしい……好みにドンピシャというより、好みを形作ってくれたバンドといっても過言ではない……しかし……怒られることを承知で申しますと……わたしにとっては、楽曲以外の部分で見られる不器用さが印象的なバンドなのだ。

 

最初に「!?」と思ったのは、思春期の終わりに、スピッツのPV集を見ていたときだ*2。20年以上前、レンタルVHSだったと思う。ボーナストラックとして、「日なたの窓に憧れて」のライブ映像が収録されていた。「ロビンソン」がヒットするより前の、黎明期のライブだったと記憶している。

これがもう……なんというか、ボーカルの草野マサムネ氏、まったくノれていないのだ。あの曲はノッて歌わないと、とたんに平板に聞こえてしまう。後に、インタビューで「昔はライブがすごく苦手だった」と語っているのを読んで納得したものだ。そののち、ライブで「日なたの窓に憧れて」を聞いたこともあるが、古い映像とはまったく違っていて、「成長したんだなア……」と失礼なことを思った。

スーパースターは、最初から常にスーパースターである。漠然とそう思っていた思春期のわたしにとって、あの「日なたの窓に憧れて」は衝撃を残した。そして、そんなところもバンドのイメージに合っていて魅力的に感じさせてしまうのが、彼らのすごいところだと思う。

とはいえ、あの映像を見たのは1回きり。いま見たら、感想は違ってくる可能性はある。

 

もうだいぶ前になってしまうが、スピッツのファンクラブ「Spitzbergen」 に入会していたことがある。2000年代のことだ。ファンクラブ会員限定ライブ「GO!GO!スカンジナビア」(ゴースカ)というものがあり、当然、いそいそと足を運んだ。が……なんだかMCがぎこちない!

と、「ファンクラブ会員限定ライブだと思うと、緊張してしまって」と草野氏(たしか)が漏らした。そういえば、冒頭から、「ファンクラブ会員限定なんだって」「すごいよね」と、メンバー間で「ファンクラブ、ファンクラブ」と連呼していた気がする。ちなみに、「ゴースカ」はそのときが初開催ではない。

一方、その前後の全国ツアーでは、お客さんを煽ってみたり、多少は叫んでみたり。デビュー10年以上のバンドらしい堂々としたパフォーマンスを見せていた。

いや、気持ちはわかる。「ゴースカ」にいるのは、年会費を払っているファンばかり。そのファンのための特別なライブ。特別なことをしなきゃ……しなきゃ……しなきゃ……。そしておそらく、そのあとに「でも、できないのでは」がつづくのではないか。

一方、大きな会場で、ご新規さんからディープなファンまでいろんなお客さんがくると思えば、ある程度はスイッチを入れてはっちゃけられる。

わかる、わかるぜ! いや、わたしなどが何もわかるわけがないのだが、わかる気はする。

そう言いつつも、いざ演奏を始めるともちろんすばらしいパフォーマンスを披露するわけで、ギャップも魅力だった。

何より、そんなことが表に出る、出せるミュージシャンが他にいるだろうか? しかも、アリーナツアーをできるような人たちで。

楽曲に加えて、そんなところにも心をくすぐられたのだった。

 

あれからずいぶん時間が経った。いまの彼らはまた違っているのかもしれない。

 

いつかのライブのMCだったと思う。草野氏が、「しあわせな気分でないと、楽曲が書けない」というようなことを言っていた。いわく、自分が書くのは基本的に恋の歌であり、浮ついている。浮ついている楽曲は、しあわせな気分のときでないと書けない。だから、2001年のアメリカ同時多発テロ事件後は、しばらく曲が書けなかったのだと。

2011年の東日本大震災後も、TVか何かで同様の発言があったと、ひとづてに聞いた。

草野氏は、いま、楽曲を書けているのだろうか。

 

答えを知りたいわけではない。それは本人が語ることで、きわめてセンシティブな話だと思う。

 

サブスクとダウンロードの潮流に飲み込まれ、アルバムを買い、アルバム単位で聞くという行為が、自分の生活習慣からすっかり消えてしまった。スピッツを追いかけられなくなったのも、その影響は少なからずある。スピッツを聞くなら、アルバム単位できちんと聞きたいという欲求があるからだ。

 

週末は、最新のアルバムを入手しに行こうか。そんなことを考えながら、とりあえず、わたしがいちばん聞き込んだ曲、「大宮サンセット」をちいさな音で流し、この記事を書いている*3

 

画像は《品川の街の夕日のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210725190post-35662.html

大宮でなくてすみません……。

*1:知っている人は知っていたわけですが、やはり老若男女に知れわたったのはこの曲からだと思うので

*2:あまりに昔過ぎて、PV集だったか、ライブのビデオだったのか、あやふやです

*3:夢追い虫」のカップリング。「色色衣」にも収録されていますが、なぜかシングルでわざわざ聞いてしまいます。スピッツの楽曲に対して、「一番好きな曲」なんて野暮なのだけど、自分にとって、一番思い入れがあります