「これは映画館で見てよかった!」と思える映画ってありますよね。
この間、まさにそんな映画に出会ってしまったんです。それは『BLUE GIANT』。
原作は、『岳』で知られる石塚真一さんによる同名コミック。ジャズに魅せられてテナーサックスを吹き始めた宮本大(みやもとだい)が「世界一のジャズプレイヤー」を目指す姿を描いています。
原作の単行本はエピソード区切りでタイトルが変わり、巻数をリセットして連載中。
大の日本での黎明期を描いた『BLUE GIANT』が全10巻、ヨーロッパへ渡った大の姿を描く『BLUE GIANT SUPREME』が全11巻、大がアメリカ西海岸へ降り立つ『BLUE GIANT EXPLORER』は既刊8巻。累計発行部数1000万部を突破しています。
映画は大が日本で過ごした日々を描く『BLUE GIANT』部分をアニメ映画化したもの。
わたしは漫画未読――というか、実は何度か挑戦して挫折しています。
物語はジャズプレイヤーになるため、大が仙台から上京するところからスタート。やがて大は高い技術を持つピアニスト・沢辺雪祈(さわべゆきのり)、同級生でまったくの初心者ながらジャズに魅せられてドラムを始めた玉田俊二(たまだしゅんじ)と、三人編成のバンド「JASS」を組むことに。
あまりにもまっすぐ過ぎる大、自信家の雪祈、足を引っ張りがちだと悩むものの、いちばん柔軟な玉田。彼らはぶつかりながらも大の演奏に魅せられ、認め合い、頂点へと駆けあがっていきます。
タイプが違い、我が強い三人が直面するそれぞれの壁や挫折は、生々しいものです。たとえば、三人の中でいちばん経験も技術もあると思われた雪祈は、それゆえのハードルが立ちはだかります。乗り越えるのは最終的には己の力なのですが、跳ぶためのバネになるのが、認め合うものの馴れ合わない三人の関係性です。
それがもう、本当に見ていて胸が熱くなるんです。
その熱さと常にセットになっているのが、ライブシーンです。
ちいさなジャズハウスでわずか客三人だったはじめてのライブ。
地域のジャズフェスティバルで、「メインアクトを喰ってやる!」と鳴らす自分たちの音。
そして大舞台でのラストライブ……。
「JASS」は雪祈が作曲したオリジナルの曲を演奏しており、アニメ映画ではそれを上原ひろみさんが作曲。
ライブシーンでの演奏も、上原さんが雪祈のピアノを担当。ほか、大のサックスはオーディションで選ばれた馬場智章さん、玉田のドラムはmillennium paradeにも参加されている石若駿さんによるものです。
その音楽の迫力ったら!
作品のキーになるのは間違えなく、吹いて吹いて吹きまくってきた大のサックスの“引力”で、その強く情熱的な音色が見事に表現されていました。
映画館で見てほしい理由のひとつが、この「音」を最高の音響設備で浴びてほしいから。
音楽に加えてライブシーンで圧巻なのは、映像表現です。人のリアルな動きを入れた方がよいごく一部のカットだけは3DCGを使い、あとは2Dアニメで演奏者の表情、音の奔流、感情の流れがひたすら表現されます。ここでポイントになるのが、「作中で観客が受けているエモーショナルな印象や、演奏に打たれた感動」もアニメーションで表現されていること。
このライブにたどりつくまでの熱い物語、そのすべての想いを叩きつける演奏(音楽)、加えて観客の感動。これらが三位一体になって迫ることで、思わず映画の観客だるわたしも、「今、伝説的なライブに立ち会っている!」気持ちになれる。この没入感は、ぜひ映画館で味わってほしい! それが劇場で見てほしい二つ目の理由です。
ライブシーンは一部YouTubeで公開されているのですが、あえて貼りません。単独で見ても素晴らしいものですが、初回は物語の流れの中で見てほしいから……。
いろいろ御託を並べてしまったのですが、『BLUE GIANT』はとにかく熱い!
キャッチフレーズの「二度とないこの瞬間を全力で鳴らせ」そのものな、青く激しく燃える三人の青春とその帰結、ぜひ劇場で見て! 見て! 見てください!
お願いしますッ!
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画像は写真ACからお借りしました。