今週のお題「今の仕事を選んだ理由」
私は、今の仕事を選んだのだろうか。
よくわからない。
一番はじめに働いたのは、この業界の、別の仕事だった。
合わなかった。
無職やフリーターを経て、20代半ばになった。
なりゆきで始めたアルバイトは、接客業だった。
接客は好きだったが、このままいつか社員になるとしたら、
マネージャーの立場になる。
人のマネージメントは、もっとも苦手とするところだ。
毎日がぼんやり不安に過ぎていくなか、
このまま年を取っていく前に、今の仕事をしてみたいと思った。
それでダメならこの業界をあきらめようと求人サイトを探したら、
運よく働き口を見つけ、採用された。
この職種についてから、私の情緒は飛躍的に安定した。
要領の悪さで上司をあきれさせはしたけれど、仕事は楽しかった。
最低限、社会で求められるぐらいに上手くできることに、
はじめて出会えたのだった。
新卒のときから、私はずっと普通になりたかった。
普通に就職して、普通に働きたかった。
かわりがきく、社会の歯車になりたかった。
私のかわりが他にもいるということは、
「私」は「他の誰か」並に働くことができ、求められているということだからだ。
紆余曲折を経て、今の仕事に就き、
私はやっと、「社会の歯車になれた」と感じられたのだった。
そのころの変化でよく覚えているのは、
三食がとても楽しくなったことだ。
コンビニ弁当しか選択肢がなくとも、
お腹が空いて、何かを選び、食すことが喜びだった。
「食」は生きることの基本だ。
活力を与えてくれる。
仕事を通し、社会にしっかり着地した今、
しっかり食べて、旺盛に活動しよう、と心身が適応したのかもしれない。
それでも、会社組織の不可解さにはなじめなかった。
なぜお給料がもらえるのか。ボーナスが出るのか。
事務所代やらの諸経費、私の人件費、
それで会社が回っていることも不思議だった。
最初に勤めた会社が、体制は古いものの実力主義で、
「私の給料は、仕事ができる先輩の働きから出ているんだな」と
強く感じさせるものがあったので、そのせいもあるかもしれない。
いつかこの組織でお荷物になって、追い出される。
どこにいても、それをずっと待っているように感じていた。
何年か働いて、自営業になった。
自営業は、わかりやすい。
この仕事1本でいくら。
この仕事は、これだけの工程があるからこれぐらいはほしい。
「その額を出せません」と言われたら、
仕事に他のバリューがあれば引き受け(経歴にハクがつくなど)、
そうでなければ断る。
シンプルだ。
そこが、居心地がよい。
自営業は不安定だが、
いつか追い出される(と私が思い込みがちな)組織にいるより、
ずっと安定しているのだった。
業界は先細りでどうなるかわからないけれど、
私はこの職種の、自営業という働き方が好きだ。
仕事を選んだというより、
この職種にしかなれなかった。
この働き方でしか安定できなかった。
流れ流れてたどり着いたのがここだった。
みんなどうやって、仕事を選んでいるのだろう。
後で、「お題」について書いたブログを、いろいろ読んでみたいと思う。
話は変わるが、夫に今の仕事に就いた理由を聞いたところ、
「どうせ関わるなら興味のあるものに関わりたかった」と言っていた。
「ボーナスって意味わかんない」と言ったら、
「俺もよくわからんって思うよ」と返された。
こういうところ、二人はとてもよく似ているけれど、
夫は厳しい就職活動を勝ち抜き、
新卒で入った会社で、ずっと勤め続けているので、
夫のほうが社会で生きるスキルにずっと長けているのだと思う。
満員電車、異動、人間関係。
いろいろあるだろうけれど、夫はそれを愚痴るでもなく、
ベストを尽くしている。
普通かもしれないけれど、
普通のことを一生懸命やっている、
やりぬいている、
それは、とても尊いことだと思う。
そんな夫のことを、尊敬している。