できれば、子どもを授かりたいと思う。
「妊娠を積極的に希望する」という事態は、結婚前にはなかったことである。
そして、いわゆる月のものがくるまでは、
「ひょっとしたら妊娠しているかもしれない」状態が、ずっと続く。
そんなことも、はじめてである。
これには、小さな戸惑いを感じている。
風邪を引く。
皮膚が荒れて医者にかかる。
歯医者に行く。
そのたびに薬をもらったり、使ったりする。
処方薬の注意書きには、
「妊娠中の方や授乳中の方は、医師にご相談のうえ~」とある。
それを読んで、「あっ、私、妊娠している可能性あるんだった」と思う。
しかし、医師を前にすると、症状を説明するのに気を取られ、
「妊娠をしているかもしれません」と言うのは忘れてしまう。
そもそも、まだ妊娠中と決まったわけではない。
ついでに言えば、年齢を考えれば、そうそう妊娠はしないと思われる。
意識がなかなかそちらに向かないのだ。
先日、親知らずを抜歯した。
そのときは、
「妊娠を考えているのですが、避妊はしたほうがよいでしょうか」と
忘れずに聞くことができた。
果たして手術なのか、どんな処置をするのか、想像がつかなかったからだ。
大学病院の女医さんいわく、
「当日は麻酔をかけますし、処置後はキツい痛み止めも飲みます。
この治療が終わるまでは、避けた方がよいでしょう」とのことだった。
親知らず後、かかりつけ医で虫歯の治療を開始した。
そのときに同じように説明すると、
「気にする人は気にするけど、
正直、妊娠に影響があるというエビデンスはないんですよ。
その人次第。
妊娠中だって、麻酔して、普通に歯の治療は行います。
レントゲンだって、歯医者では防護服を着て頭の上を撮るだけ。
影響があるとは言えないんですよ」。
そのうえで、あくまで個人的な見解として、
「食品の添加物なんかを気にしたほうがいいと思いますけどね」と付け足した。
計画的ではない妊娠をする人もたくさんいる。
私はお酒もたばこもまったくやらないが、
妊娠がわかるまでは飲む/吸っていたという人も多いだろう。
そんなに気にしなくてもよいのかもしれない。
ただ、風疹のように、妊娠後では対策ができないものもある。
みんなが知っていて、「えっ、それ、知らなかったんですか?」と言われることが、
あるかもしれない。
数年前に妊娠出産した友人は、
「妊娠する前っていうか、妊娠しようと思ったときから、
葉酸飲んどけ」と言っていた。
「よーさん」なんて、そのときはじめて聞いた。
何にせよ、情報収集が大切だ。
みんなは、何をどの程度気にしていた/気にしているんだろう。
結婚前の、「できたら子どもを授かれたらよいな」はフワフワした願いだった。
しかし、妊娠を望むことは、命を宿したいと願うことであり、
もし成就すればその状況はノンストップとなる。
なにしろ、命なのだから。
フワフワ望むことと、現実的に望むこと。
そのごく当たり前の落差に、小さく戸惑っている。