平凡

平凡

推し松は十四松なのだと、夫は言った

TVアニメ「おそ松さん」がたいへんな人気を博している。

 

「おそ松さん」は、赤塚不二夫氏の「おそ松くん」の現代版リメイク。

六つ子が成長して、それぞれの個性を獲得。

ニートとしてのんべんだらりと過ごす彼らの日常を、

シュールありコントありパロディあり涙ありのバラエティに富んだ

ショートストーリーで描くというもの。

単なるリメイクにとどまらない攻めた笑いが魅力だ。

 

オンエアが始まったとき、夫は、

「えっ、なんで今、『おそ松さん』なの。

あれだよね、『おそ松くん』なんだよね。

誰が見るの、誰が見るの。

昭和だよ」と、

第1話の六つ子さながらの台詞で不思議がり*1

パロディシーンになると

「『進撃の巨人』が出てきた!」と驚き、

非常に混乱していた。

 

「女性人気が見込まれているんだよ」と言うと、

「なんで女性なの? 『おそ松くん』だよ? 『シェ―』だよ」

と目を白黒。

「声優さんが豪華なんだよ」と説明しても、納得はいかないようだった。

夫は、小野大輔氏、神谷浩史氏ぐらいの名前は知っているのだが。

 

それからも、私の横でたまに視聴するものの、

チョロ松のような困り顔をするばかり。

しかし、トト子が水もしたたるラバースーツのお魚衣装を着て、

アイドルを目指す第8話「トト子の夢」ではじめてクスッと笑い、

ふだん、異常にテンションが高い十四松を主人公にした切ないラブストーリー

第9話「十四松の恋」ではジンと来たようで、

次第に楽しみにするようになった。

 

「瞳が大きいのがトド松」

「『へ』の字口がチョロ松」

「それぞれにイメージカラーがあるよ」と、六つ子の見分け方もレクチャー。

 

いまだにおそ松とチョロ松は区別が付きづらいようだが、

「瞳孔開いてるから、十四松!」

「ジト目だから、一松!」と、

言い当てながら楽しそうにしている。

 

そんな彼の推し松は、

何をするか予測不能の、六つ子の核弾頭こと十四松。

はじめて見分けがついたキャラで思い入れがあるから、らしい。

雛鳥のような理由だが、なんとなくわからないでもない。

 

だからといって、第17話「十四松まつり」で喜んだかというと、そうでもない。

「十四松は好きだけど、『ぼえええ』というときの野太い声がイメージと違う!

十四松はあんな声は出さない!」

ともだえている。

夫の十四松観がわからない……。

 

ちなみに、私の推し松は、カラ松。

ナルシストでカッコつけで、なんだかかわいいと思ってしまうのだ。

 

そんなわけで、夫婦そろって月曜の深夜を楽しみにしてきたこの秋冬。

最終話を迎える別れの春が、ちょっと怖い今日のこの頃であった。

*1:第1話は「昭和の俺らじゃ人気が出ない!」と危機感をもった彼らが、ある行動に出るところから始まる。パロディ満載の第1話は、「権利上の問題」から、DVD等ソフト未収録、配信停止になった