フィクションの主人公には、試練が降りかかる。
バトルやスポーツものの長編連載になれば、そりゃもう何度も何度も。
ライバルとの対決に、イップスなどのケガ、仲間とのつらい決別……とかなんとか。
しかし、どうして我々はそれにワクワクしてしまうんだろう。
もしワクワクできず、「試練、つらすぎ」と投げ出してしまう作品があるとしたら、何が違うんだろう。
ということを最近、ずっと考えている。
なぜなら! 書いている小説で! この後! 最高につらい展開を考えているから*1!
ちょっと前は、主人公が追い込まれて自暴自棄になる展開に悩んでいた。
当初考えていた主人公が取る行動が、あまりにもひどかったからだ。
「主人公はどこまで自暴自棄になっても許されるんだろう」と考えながら、フィクションを読み直したり考えたりした。
ほら、「リゼロ」のスバル君とか……。
短編か中編なら、自暴自棄におちいってかなり悪質なことをしても、それを乗り越えること自体がメインテーマとなりえる。
しかし、長編の途中であまりにひどいことをすると、その後、主人公は主人公でいられなくなる。
ようするに、応援してもらったり、このキャラクターの先を見たいと思ってもらえなくなるだろう。その後、運よく読んでもらえたとしても、どんなにいいことをしても、「あんな悪行を働く奴でしょ」と見られてしまう。
わたしはまだ物語をつづけたかったので、「主人公が自暴自棄になって何をするか」は、当初の想定から変更した。
あれから物語を読むとき、「主人公の条件とは何か」「何が主人公を主人公たらしめるのか」を考えるようになった。
ふだん読んでいるのは商業流通している作品や、世間で評判になっている作品だ。そういったフィクションは、世に出る時点で最低限のクオリティコントロールがなされている。
なので、「主人公が主人公たる存在ではない作品」に接することはほぼない。
しかし、自分で書くとわかる。
主人公は物語にとって特別な存在で、主人公でい続けるためには条件がある。拙い書き手は、主人公を主人公から転落させてしまうことだってじゅうぶんありえる。
話を試練に戻そう。
たとえば『鬼滅の刃』で、炭治郎にふりかかる試練を手に汗握りながら夢中になって読めるのはなぜか。おそらく、無惨を滅するという絶対的なゴールの提示と、基本は主人公が右肩上がりに強くなる物語の構造だろう。
物語は基本、試練の連続のはずだ。
ラブストーリーだと、ふたりの気持ちが通ったところに、ライバルが現れるといった展開がよくある。
長編の、仕切り直しの新展開とはどういうものか。
新鮮な切り口でメインキャラやサブキャラの魅力も見せつつ、「これこれ、こういうところ好き~」と思ってもらい、そこからツルツルと不穏と試練のツイストへ……。
そんなスロープ状のスタートなら読者も入っていきやすいだろうか。
とにもかくにも、わたしは書きたいものを書きつつ、現状、Web小説投稿サイトで20万字近くを読んでくれて、さらに10か月更新がなくても反応を返してくれた4人の読者(神なのかもしれない)を離したくないのだ*2。
そして、推定40万字の完結まで、主人公の行く末を見届けてほしいのだ。
この展開だって、工夫次第では4人の読者はきっとついてきてくれるはずなのだ。
つらくとも……!
チートもスキルも魔法もなくても……!
地獄が顕現しようとも……!
主人公たちの望みがすべて粉砕されて、それでも生きようとする展開に……きっと……!
書きたいものをねじ曲げる必要はない。
しかし、読者が最低限ついてきてくれるだろうと思える展開(実際についてきてくれるかどうかは別だ)を考えるのは、わたしにとって必要なことだ。
(数少ないとはいえ)読者がだれひとりついてこない展開は、きっと作者のわたしも楽しめない。
というか、そういった展開は、おそらく何かが唐突すぎる。
その一方で、思いついた筋書きのどこかには、今まで書いてきたすべてに通じるエッセンスが必ずひそんでいるはずだ。
それをあやまたずつかむこと。
つかんで転がすこと。
どんな展開を選んでも、及び腰では書かないこと。
稚拙ないまの技術で、できうるかぎり、いいものを。
素人が執筆姿勢や進捗ではなく、展開についての迷いを吐露するのはどうかと思う。
いや、素人であるかどうかは関係ないか。
しかし、こうして書いているうち、迷いの霧がすこしだけ晴れたのも事実。
ブラウザを閉じたら、「書きたいこと」「問題点」「訴求したいこと」をあらためて書き出してみよう。
それにしても、この作品を書き始めてから、フィクションをいままでと違う角度から見ることが増えた。
そしてそして! もしこれを最後まで読んでくださった方がいらしたら。
「主人公にたび重なる試練が襲いかかるが、それに燃えた長編作品」を教えてくださいませ。
「最大の試練がふりかかる……!」みたいなキャッチがつきそうなやつ……。
ブクマでもコメントでも。お待ちしております!