平凡

平凡

追記あり 小説を書いたときに、役に立ったTips備忘録

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前のエントリーで、小説投稿サイトを利用して、驚いたことをまとめた。

 

hei-bon.hatenablog.com

 

起承転結がある小説を「書く」なかにも、当然、驚きや発見があった。

今回は、ストーリー作りに関する指南本を片手に、実作に取り組んだ。

そのなかで効果があると感じたTipsを、「実感」とともに書き記してみる。

書き慣れている人には、よく知られているものばかりだとは思うけれど……。

 

前提として。

小説はいままでも書いていた。

ただ、キャラクターがはっきりしない、物語の筋も茫洋としたものが多かった。

すごくよく言えば絵本的というか。

「小説投稿サイトに投稿している小説」は、キャラクターがいて、物語に山があって谷がある、広義のエンタメ小説を目指している。

原型は、勢いにまかせて書き散らした50万字超の妄想。

うち10万字ぐらいは、投稿前にかなりまとまった状態にあった。

その「原型」がある状態で、指南本を読みながら整えたり、続きを考えたり、という流れ。

本当はゼロからやるほうがよいのかもしれない。

 

それと、わたしは物語には型があり、それを書き手が学ぶことは個性を棄損しないと確信している。

よほどアバンギャルドな作品じゃないかぎり、類型はある。

そして、アバンギャルドなものも、「型」を破ることで作られているのだと考えている。

 

 

その1「ログラインで物語を引き締めろ!~『SAVE THE CATの法則』~」

 

いちばん参考になった指南書は、超有名な『SAVE THE CATの法則』。

 

www.kaminotane.com

 

この本は、語り口調で書かれているので、読みやすいし、頭に入ってきやすい。

なかでも初心者でも「これは効果があった!」というのが、「ログライン」。

 

「ログライン」とは、「一行でその映画を表すもの」。

「で、それはどんな映画なの?」の問いに、一文で答えるもの。

 

作者のブレイク・スナイダー氏は言う。

「まずログラインを徹底的に考えろ。一行で思わず『その映画を見たい』と思えるものにしろ」。

「脚本を書きたくてうずうずするだろうけれど、これが完璧になるまで筆を進めるな」。

 

よい脚本のログラインは、一文ながらに皮肉がきいていたり、キャラクターが伝わってきたりで、「おっ」と興味を惹かれるという。

たとえば『ダイ・ハード』なら、「警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに占拠される」。

(これに関しては、映画の面白さに比して、そんなにすぐれたログラインか? とは思う)

『プリティウーマン』は、「週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋してしまう」。

わたしは知らない映画だったけれど、『ブラインド・デート』なら、「彼女は完璧な美女ーーお酒を飲むまでは……」。

これはキャラクターがはっきりとわかり、展開への期待をそそられるログライン。

 

で、わたしの妄想を文章にしたものについて、ログラインを考えてみた。

「誰が何をする小説で、何が売りなんだろう?」

こういうときはとにかく書き出すに限るので、ノートにびっしりとログラインもどきを書き連ねた。

主人公の男の子の魅力は何なのか?

どんな根源的欲求をもって生きているのか?

たった一文だけれど、それを書くために、作品について、キャラクターについて、自然と深く考えることとなった。

そうしてなんとか納得できるものをひとつ、ひねり出した。

 

もう「ある」物語ではあったけれど、これをやったおかげで、背骨と輪郭がピシッと決まり、その後の執筆の道しるべになってくれた。

「なんか真面目な男の子」といった茫洋とした主人公像も、「どう真面目なのか」「真面目だから、どう生きたいのか」と、よりくっきりしたものとなった。

このログラインをキャッチフレーズにしてから、読者も少しだけ増えた気がする。

ログライン、大事。

 

小説家になろう」などでよく見かける長いタイトルは、このログラインになっていることが多い。

あまたの作品が並び、読者にアピールせねばならない場で出てきた技だと思えば納得だ。

 

で、ログラインについてはこのように効用を実感できたものの……。

そのほかについてはさっぱり。

「物語の書き方本」の内容に納得して、「これはいいな!」と思っても、実作に反映するのはとても難しい。

相当な試行錯誤をしなければいけない。

これも指南本片手に書いてみてよくわかった。

当たり前のことだが……。

 

 

その2「指南所は大量のインプットを前提としている~『小説家になって億を稼ごう!』~」

 

それと、創作の指南本を読んで感じたのは、たいてい「大量のインプット、もうしてるよね?」を前提に書かれていること。

『SAVE~』にしてもシド・フィールド氏の脚本術にしても、タイトルで揶揄されがちな『小説家になって億を稼ごう』もそう。

「インプット足りないです……」と、読み進めるたび反省した。

 

 

www.shinchosha.co.jp

 

『小説家になって億を稼ごう』の冒頭には、超簡単な三幕構成の作り方が紹介されている。

キャラクターのビジュアルを貼り出して、とにかく妄想して妄想して、妄想を煮詰めてから書き始める、みたいなシンプルな方法。

が、シンプルだからこそ、映画でも漫画でも小説でも、浴びるようにフィクションを浴びて「型」やバリエーションを自分のなかに持っていないと難しいと思う。

美味しいスープをお出しするには、まず素材がいるのです……。

実際、同書には、「大量のフィクションにふれてきたあなたにならできるはずです」みたいな文章が挟まれている。

 

同書には、ほかにも「賞を取ったらどうなるか」「売れたら何が起きるか」「編集者との付き合い方」「映像化したら」などが事細かに書かれている。

新人小説家の心理状態にぐっと踏み込んで、アドバイスを与えている。

マジモンのエンタメ系ベストセラー作家だからこそできる、ほかに類を見ない「小説指南本」だ。

「編集者は敵ではありません」とか、「映像化にあたって原作者は地主のようなもの」とか、なかなか書けません……。

確定申告の話も出てくるし、「純文学では」「ライトノベルでは」と、ジャンル別にアドバイスをしているのもこまやか。

創作をしない人でも、フィクション絡みの出版業界事情に興味ある人はおもしろく読めるはず。

 

その3「超有名漫画家に黄金のエンタメを学ぶ~『荒木飛呂彦の漫画術』~」

 

ほかに参考になったのは、『荒木飛呂彦の漫画術』。

 

 

shinsho.shueisha.co.jp

 

この本のよいところは、「メガヒット漫画家の荒木氏が考える王道エンタメとは何か」がはっきりと示されていること。

「わたしのエンタメとは違う」と思うもよし、「わたしはアバンギャルドに行きたいのでこれは破る」と思うもよし。

ともかく「ひとつの完成された型・考え方」が示されていることで、「自分なりのエンタメとは何か」「自分は今、何を書いているのか」を考えるうえで非常にすぐれた道しるべになってくれる。

 

ちょうどこの本を読んだのは、「主人公が悩み、転落する」筋を書いたころ。

「主人公が上がり続けるのが王道エンタメ」

「逆に、転落させるなら、下げ続けることでエンタメになる」

などの内容を読んで、いろいろ考えるところがあった。

この状態の主人公を「上げる」としたら、何をすればよかったのか。

あるいは、「これは王道エンタメではない」とするなら、この先、何を書くべきなのか……。

 

それと、この本には、荒木氏が編み出した「読者をひきつけるための冒頭の工夫」「キャラクターをひとコマで説明する工夫」などが惜しげもなく開帳されている。

もちろん、それらはなかなか真似できるものではない。

が、「ここまで読者のファーストインプレッションを気にするのか」「こんな細やかなところでキャラクターの特徴を説明しているのか!」と、読者への目くばせやスピリットは参考になる。

 

キャラクターの履歴書ともいうべき「キャラクターシート」は、実作におおいに役立った。

自分でキャラクターの設定を作っていると、ここまで細かい項目はなかなか思いつかないし、想像力の限界やクセがある。

「枠」を埋めることで、自由な想像だけでは浮かばなかったキャラクターの個性を思いつく。

シートを作ることで、脇役についてなんとなく書いた描写の厚みが変わってくる。

ある意味で、書き進めることを楽にしてくれる。

 

 

いまのところは、これぐらい。

おそらく、これからもログラインを考え、キャラクターシートを埋めながら実作を進めていくと思う。

ただ、初期の驚きや、Tipsが役立った感動は、やがて薄れてしまう。

自分の備忘録も兼ねて、このエントリーを書いてみた。

 

 

追記「指南書を“立ち読み”したいときに~『きちんと学びたい人のための小説の書き方講座』」

この記事、アクセスいただいているようなので。

「指南書がたくさんあってわからない!」

「基本をサラッと学びたい!」

「『書き方本』って気になるけど、そもそも役に立つの?」

という人は、カクヨムの「きちんと学びたい人のための小説の書き方講座」がおすすめです。

『SAVE THE CAT』など、創作系のテッパン本を数多く出版しているフィルムアート社の連載。

自社の出版物から、創作に役立つTipsをわかりやすくまとめています。

kakuyomu.jp

 

創作本の試し読み集も。

kakuyomu.jp

 

写真は《新刊に興味津々ハリネズミのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20171018298post-13794.html