平凡

平凡

ふたりのお引っ越しは、ひとりのときと全然違っていた件

1に利便性、2に利便性、3、4がなくて、家賃が多少高くなっても仕方ない。

私の独身時代の部屋選びの基準は、こんな感じだった。

新卒後、会社勤めをしていたときは、わりと常識的な部屋選びをしていたものの、

今の職業に就いたあたりからは、

出せる範囲内で家賃を高めに設定し、極力、電車移動が少なくてすむような物件を探してきた。

 

現在の私は会社員ではないので、定期券がない。

仕事のなかには、ギャランティが交通費込みのものもある。

プライベートでの移動も含め、交通費はバカにならない。

1万円程度の家賃上乗せなら、交通費と相殺できる。

移動時間が少ないほど、落ち着いて仕事もできる。

それが私の考え方だ。

(もちろん、同業者のなかには、もっと堅実に暮らし、もっと時間を上手く使い、もっと稼いでいる人たちもたくさんいる)

 

1万円程度上乗せした予算に加えて、

築年数度外視、

立地によっては1階OK、

和室歓迎、

バランス釜追い炊きできて素敵ですね、

洗濯機置き場が室外って、ベランダ内なら動線短くてすみますね。

共用廊下に洗濯機置き場、音が気にならないんじゃないですか?

オートロックはむしろ不要(見通しの悪さがかえって危ないと感じる)、

あたりの条件で不便を「殴る」。

そうすると、わりと便利なところに住めるのであった。

 

そんな私が結婚し、現在の部屋から引っ越しを考えるようになった。

 

(現在の部屋についてはこちら)

hei-bon.hatenablog.com

 

ふたりで部屋を探しはじめて痛感するのは、ファミリー物件の壁。

先に挙げたような条件では、利便性は手に入らない。

家賃の上乗せは1万円では足りない。

もしくは、譲歩条件に、もう少しハードなものを付け加える必要がある。

具体的には、騒音、日当たりが激しく悪くてOKなど。

(日当たりも、ちょっと悪いだけでは値段はそう下がらない)

また、私たちは子どもを望んでいる。

出産後は、夫ひとりの稼ぎに頼る期間ができるため、「私が多めに出すよ!」では解決できない。

今から「私が多く出すと宣言した金額」を貯蓄して備えることもできるけれど、

いざ子どもが生まれたら、それを別のことに回したいと考えてしまいそうだ。

 

夫は会社員としてまっとうな金銭感覚をもち、そして、会社員として業界の不況を目の当たりにしている。

毎日、通勤電車に揺られることも「ルーチンだ」と割り切ることもできる。

高めの家賃を仕事の利便性のためにホイホイ払う私とは、感覚の乖離がある。

 

そんなわけで、ふたりで話し合いながら、落としどころとして、

「まあまあ便利に暮らせて、家賃が抑えられる街」を探してきた。

若者が多い場所、活気に満ちたベッドタウン、下町、畑が残るのんびりとしたところ、文化的な香りがする街。

街によって、さまざまな顔があり、生活があった。

 

複数エリアで賃貸物件を見て感じたのは、やはり首都圏は家賃が高いということ、

土地柄により、物件の質や種類が変わるということだ。

また、首都圏の家賃は完全に西高東低。

東西それぞれのターミナル駅を起点に東に10キロ、西に10キロ離れるとしたら、東のほうが断然、家賃は安くなる。

(起点はたとえば西なら新宿、東なら東京など)

漠然と感じてはいたが、これほどとは思わなかったし、

乗り入れの増加で、西の「高」は顕著になっているように感じた。

 

家賃が安い場所ほど、リフォームに気合いが入っており、

より安く、きれいで使い勝手がよく、広い物件が借りられる傾向もあった。

ファミリー向け物件が充実しているのも、家賃が安いエリア。

人気のエリアほど、 物件内部は手が入っていなかったり、設備が古いまま。

(もちろん家賃をガンガン上げれば、きれいな物件に住むことはできる)

それでもなぜ人気エリアに人が住むかというと、交通の便と、街の雰囲気。

ここでいう交通の便は、ターミナル駅からの距離というより、

1本でどの駅に行けるか、地下鉄が乗り入れているかなどの要因が大きい。

やはり人気エリアには、ブランドだけではない、それなりの理由があると感じたのだった。

 

そして、「住みたい」と思える物件との出会いは、まさに一期一会であると実感した。

価格も内装も悪くないけれど、ささいなところが自分たちにとって使い勝手が悪そうと二の足を踏むこともあれば、

「ここはやめておこう」と言ったエリアで、「これは!」と思う物件が見つかったりもする。

 

今まで、これほど複数のエリアにまたがって物件を探したことはない。

こうした傾向を知ることができたのは、おもしろくはあった。

とはいえ、正直、いろいろな物件を見過ぎてしまったような気もする。

果たして、理想の「まあまあ」は見つかるのか。

桜舞い散るなか、知らない街を歩きながら、

(早く落ち着いて、住めば都フェーズに入りたい)と考えている春である。