前回、マンガ「服を着るならこんなふうに」を読んで、「ユニクロへ行きたい」と言い出した夫。
常々、「夫にはもっと似合う洋服があるはず……」と考えていた私は、この好機を逃すまいと、さっそくユニクロへ向かったのであった。
夫の目当ては、マンガで「基本のアイテム」と紹介されていた、黒のテーパードスキニー。
テーパードというのは、先細りのシルエットのこと。ピタピタして、足首にかけてシュッと細くなるシルエットだ。
もうひとつは、ファッションブランド、ルメールとのコラボの白いシンプルなシャツ。
まずはテーパードスキニーから試着。
「うん、たしかにスッキリ見える気がする!」と、夫はなかなか気に入ったようだ。
2サイズ履いて、小さいほうを選ぶ。
私には、男性のスキニーがどれぐらいお尻のラインに沿えばよいのかわからなかったし、
夫はスキニー自体履くのははじめて。
なので、店員さんに「これぐらいのサイズ感でよいでしょうか」と相談し、そのまま裾上げのピン留めまでしてもらった。
私たちが行った店舗では、ルメールコラボは残り少なく、お目当てのシャツも売り切れていた。
裾上げの間、在庫が豊富と聞いた銀座店に向かう。
銀座店では、12階ワンフロアを使ってルメールコラボを大展開しており、在庫量がまったく違っていた。
さすが旗艦店である。
また、銀座店でも、その前に行った店舗でも、ルメールコラボを見に来ている人たちが、非常にお洒落さんだったのも印象的。
「指名買い」しにきた様子で、皆、真剣に選んでいた。
目当てのシャツのほか、ボートネックのTシャツや、ちょっと目が粗めのニットを持ち込んで、いざ試着。
そして、試着してはじめてわかること。
全体的に、シルエットが細い……! 若い……!
夫は細身だが、わりと骨太というか、体幹がしっかりしていることもあり、
今一つ雰囲気が合わない。
夫は鎖骨を見せたらキレイに見えるだろうとかねてから思っていたので、私はボートネックのTシャツに期待していたのだが、
腕が細く、ぴったりとしていて、「これは街で見かける、折れそうに細い若い男の子のための服だな」と感じた。
ニットもしかり。
お買い上げとなったのは、白いシャツだけだった。
夫婦で、夫の洋服をガッツリ選ぶというのは、はじめての経験だった。
夫を見ていて驚いたのは、試着を大変に嫌がることだ。
さすがにズボンはすんなり試着していたが、トップスだけの試着となった銀座店では、一刻も早く試着室を出たそうだった。
それでも、ルメールコラボのアイテムを試したところ、
「見ているだけではわからなかったけれど、あんなにシルエットが細いんだね。着てみないとわからないね」
と、試着の必要性を少し感じたようだった。
服は置けば平面だが、着れば立体。そして、人体は立体。
袖を通してみないとわからないことがたくさんあるのだ。
夫に、試着の何が嫌なのかを聞いてみたところ、
- 服を何度も着脱するのがめんどうくさい
- ルメールぐらい合わないとハッキリわかるけれど、着ても似合ってるのかどうだかわからないことも多い。それなら着なくてよかったじゃんと思う。
- 店員が待ち構えているのが嫌
とのことだった。
1、2に関しては、もうこれは試着の宿命なのであきらめるとして、3で試着のハードルを上げている人は多そうだなと思った。
しかし、ユニクロでは3はない。
店員は購入の意志を確認したりもしない。
思う存分試着して、購入に至らなければ、試着室入り口の店員さんに渡すか、それも嫌なら自分で戻せばよい。
そして、ユニクロにはベーシックなアイテムが揃い、ときにはルメールコラボのような、トレンドを取り入れたコレクションも並ぶこともある。
後者のような洋服を他の店で試着するとしたら、店員ベタ付き必須なはずだ。
私は、服を選ぶときは、試着が大切だと思っている。
さっきも書いたように、着ていないときの服は平面だが、実際には立体である人体に着用するものだ。
見ているだけでは、「自分の体」という立体を入れたとき、どうなるか想像がつきづらい。
加えて、服の似合う/似合わない、スッキリ見える/野暮に見えるを大きく左右するのは、サイズ感が合っているかどうかだ。
多様で比較的シンプルなアイテムが揃い、こんなにも試着しやすい環境は他にないのではないか。
オシャレに興味がない、あるいはオシャレにハードルを感じている人が服装を変えたいと思ったとき、
なるほどユニクロは強い味方なのではないか――。
そんな風に感じた、夫の服選びだった。
それにしても、ルメールコラボはレディースも可愛かった……!
このワンピースとか。
私は夫とは逆に、せめて試着だけでも! 試着したい! 着てみたい! と思ったものの、グッと我慢。
何しろ、今年は本当に久しぶりに、セールであれやこれや買い込んでしまったのだ。
服をまとめて買うのは数年ぶりだし、手持ちの服はどれも年齢感に合わなくなってきているし、と言い訳はいろいろあったのだが……。
まあ、私のことはさておいて、夫があの白シャツをさっそうと着こなす春夏が、楽しみな今日この頃である。