平凡

平凡

ひとつになりたい、のかもしれない

ときどき、夢を見る。 ある夢では、凍りついた野山で、吹きすさぶ雪が顔を打っていた。 まつ毛に雪が積もって視界はせまく、 肌の感覚はすでに失われていた。 目を開けていられなくて、ああ、わたしはこのまま死ぬんだと思う。 そのとき心に去来するのは、恐…

概念としてのかわいさ

夫婦揃って猫好きだ。 なので、外出中はあらゆる場所に目を光らせている。 どこに猫がいるか、わからないからだ。 猫を見つける秘訣は、「いる」と信じることだと思う。 「どう考えても車止めだろう」 「こんな道の真ん中に、猫がいるはずがない」 いくらな…

家事分担の我が家の秘訣、あるいは「あなたの家事は当たり前ではない」と思う話

「家事分担、どうしてますか」。 結婚後、よく聞かれる質問のひとつだ。 世間では、夫婦ともにフルタイムであっても、 妻が主軸で家事を回す、というイメージがまだまだ強い。 わたしのまわりでも、そういったカップルが多い。 性別役割分担に加え、長時間労…

奥多摩から帰る

その電話を受けたとき、わたしは奥多摩にいた。 「おじちゃんが、倒れてしまって」 電話の向こうで、母が泣いていた。 おじちゃんとは、母の再婚相手のことだ。 奥多摩で何をしていたかというと、 レンタサイクルを借りて、デートをしていた。 相手はまだ、…

流行っているのか、フラフープ

夫の同僚が、フラフープをやっているという。 男性だが大変細身で、ふだんからプロポーションには気をつけているものの、 「ここぞ!」というときは集中して回すのだそうだ。 「くびれができますよ!」。 なんと魅力的なことばであろうか。 テレビをつけたら…

誰かと過ごすとき、特別なことなんて何もしなくていいのかもしれない

母が上京する。 今住んでいる街を案内したくはあるのだが、我が家はいろいろと片付いておらず。 観光だけお供することとなった。 (申し訳ないことである) 待ち合わせ場所は銀座で、10時過ぎ。 その日、母はなりゆきで新幹線のチケットを取って帰るので、解…

「こち亀」が終わる

「週刊少年ジャンプ」に連載されていた 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」通称❝こち亀❞が、 連載40年をもって幕を下ろすという。 インターネットを見ていると、 「ちゃんと追いかけていたわけではないけれど、ショックが大きい」との声をよく見かけた。 夫も…

ソーダ水のようなしあわせ

今年の夏は、なんだか溶けそうだった。 例年に比べてそんなに暑かったわけではないけれど、 じりじりとした陽光にやかれていると、 自分の境界線がぼんやりとしてくるので、 「わたしはこれこれこういう職業に就いていて、 結婚していて、 いま、こういう仕…

羽毛布団を捨てる

羽毛布団を、捨てようと思う。 この布団を使うようになったのは、はるか昔、もう30年も前のことだ。 そのころ、わたしの実家は新築フィーバーにわいていた。 憧れのフローリング、 小さな玄関の吹き抜け、 そして子どもたちにとっては、念願のひとり部屋。 …

圧倒的魅力をもつ大人猫の、圧倒的不利さ

隣街を歩いていたら、保護猫の譲渡会をやっていた。 猫好き夫婦の我々は、ふらりと会場に立ち寄った。ところで、子猫のかわいさは反則だと、よく言われる。 しかし、個性がはっきりと出ており、落ち着いた成猫の魅力は、 猫好きにとっては正攻法で顔面一発ノ…

平穏無事な街

そぼ降る雨の日。 仕事に行くため、駅へ急ぐ。その途中、幼稚園児くらいの姉弟を連れた女性とすれ違う。 弟は「アイスの棒が~1本~アイスの棒が~」と、作詞作曲オレによる“アイス数え歌”を歌い、 姉は顎に傘の取っ手を乗せて歩けないか試している。 ふたり…

中年、のお買い物

中年、と呼ばれる年齢である。 今までのわたしは、職業的なこともあり、楽でカジュアルな服装を好んできた。 しかし、最近、昔と同じようなかっこうをしていると、顔が浮く。 いや、「最近」なんてウソだ。 ほんとうは、3、4年ぐらい前には勘づいていたけ…

私たちの街、私たちの庭

まだ梅雨のころ。 夫婦連れ立って、引っ越しに伴う手続きをしようと家を出た。 いろいろ回ると合計10キロぐらいになりそうなので、夫はロードバイク、私はクロスバイクに乗り、久しぶりのサイクリングと相成った。 雨雲におびえながら、自転車をこぎ出す。 …

サラリーマンの妻って感じがする

夫が配置がえになり、帰宅時間が早い日ができた。 私もここ何日かは仕事が落ち着き、時間に余裕がある。 引っ越して台所も広くなったので、副菜をよぶんに1、2品作ったりしている。 そろそろ帰ると、夫からの連絡。 料理を仕上げにかかっていると、鍵を回…

ちょっとした優しさは巡り巡るのです、そう、たぶん、苹果のように。

「あの、ひょっとして、よろしかったら」 友人はそう言って、我々の前に立っていた女性に、席をゆずった。 今から10年ほど前だろうか。 胸元から広がるデザインのチュニックが、流行りに流行っていたころだ。 その女性も、そういったトップスを身に着けてい…

引き渡しの日

引き渡しの日がやってきた。今まで借りていた部屋を引き払い、空の状態にして、 オーナーや管理人の立ち会いのもと、部屋の状態を確認して、その管理下に戻すのだ。空っぽになった部屋を見ていると、はじめて内見した日のことを思い出す。 なんて日当たりが…

猫、挨拶にきたる

引っ越しである。 契約、電気ガス水道各種移転の手配、引っ越し屋への依頼を済ませ、 たまりにたまっていた不要な資料を捨て、 使わないものからパッキングをし、 それらをどう積み上げつつ生活をするか考え、 冷蔵庫のストックを使い切るべく頭を悩ませる。…

ふたり暮らしのほうが、料理は楽ですね、意外と。

結婚するにあたって心配だったのは、料理のことだった。 私は家事が得意ではないが、料理だけはちょっと好き。 それでも、独身時代の自炊は気分次第。 ひとりでなら美味しいけれど、人に作って食べさせるものではない、といった献立も多かった。 たとえば、…

岩合光昭さんメソッドって、有効なんだなってこと

夫婦そろって猫好きだ。 しかし、BSが視聴できる環境にいない。 したがって、猫好きのマストコンテンツ「岩合光昭の世界ネコ歩き」を、 めったに目にすることができないのであった。 年末年始の帰省の折は、母宅において、「ネコ歩き」の録画をまとめて見た…

フリーランス的ゴールデンウィークはどうですか? ぼちぼち仕事です。

「いつお休み取るんですか?」 「土日は休めるんですか?」 フリーランスだと話すと、まず最初に聞かれることだ。 これに対する私の答えは、「土日は、まあ、気は休まりますかねー」。 なんとも❝もにゃっ❞としている。 理論上は、フリーランスなので、休みた…

結婚の御挨拶は、両親も何かと緊張して大変だよね☆って話

結婚の挨拶の思い出というと、なんといっても、「平凡母のスプーン曲げ事件」である。 ❝事件❞の前提として、以前にも書いた通り、うちの両親は離婚している。 hei-bon.hatenablog.com そのため、「結婚の御挨拶」にあたっては、父母それぞれが、ひとりで娘の…

永作博美主演のあのCMが、今も変わらず胸を打つのは

オンエア当時、狂ったように見まくっていたCMがある。 永作博美が出演していた「月桂冠 月」の一連のシリーズだ。 CMソングは、安藤裕子の「のうぜんかつら(リプライズ)」。 とくに、「ふたりの貝」編が好きだった。 CMは、永作博美*1演じる妻が、畳の上で…

終わりなき欲求に駆り立てられて、私は今日もブログを書く

なぜブログを書くか? んなもん決まっている。 書きたいからだ。 アクセスがどんなに少なかろうが、 テーマが定まらなかろうが、 迷走しようが、 書きたいから書く。 「Evernoteでは、日記帳では、ダメなのか?」 と問われたら、ダメなのだと即答できる。 た…

げこげこ夫婦

私たち夫婦は下戸だ。 飲む、即、蒼白という「受け付けない」レベルではないが、 サワーなら、グラスに2センチも飲めば、顔は真っ赤。 言動もかなりあやしくなる。 「お酒に弱いんです」と言っても、まさかそれほどと思わないらしく、 はじめて酒席をともに…

死にたいなら死にたいまま生きればいいじゃないですか、とその人は言った

思春期のころは、ずっと死にたかった。 最初は、その年ごろにありがちな、厭世的な思考だった。 「町で一番高いマンションから、飛び降りちゃおうかな」。 あくまで自分の意思で。選ぶのは、私。 それが当初考えていた、「自殺」だった。 しかし、精神の調子…

ふたりのお引っ越しは、ひとりのときと全然違っていた件

1に利便性、2に利便性、3、4がなくて、家賃が多少高くなっても仕方ない。 私の独身時代の部屋選びの基準は、こんな感じだった。 新卒後、会社勤めをしていたときは、わりと常識的な部屋選びをしていたものの、 今の職業に就いたあたりからは、 出せる範…

おごる、おごらない問題

ネットでは、しばしば 「デートにおいて、 男性が女性におごるか、おごらないか」が話題にのぼる。 夫とまだ恋人ですらなかったとき。 居心地がよいなと感じた理由のひとつに、 夫がやたらとおごらなかったことがある。 関係が深まらないうちに食事をおごら…

さようなら、猫ちゃん

友人が飼っていた猫が、死んだ。 私たち夫婦の馴れ初めには、その猫ちゃんが関わっている。 私たち夫婦が知り合ったのは、ネットでつながった、ゆるい同業界人のグループだった。 猫ちゃんを飼っていた友人も、そのなかにいた。 私たちがお互い猫好きなこと…

さようなら、若き日々よ

「俺、やめたよ。今は、ぜんぜん別の仕事してる」。 久しぶりに会った彼は、はっきり言った。 酔いと居酒屋のざわめきでぼんやりした頭が、その瞬間、クリアになった。 それは、大学時代に所属していた部活の、同窓会のような集まりだった。 運動系の部活で…

世間知らずのころ

新卒で入った会社には、丸2年しか勤めなかった。 10人前後の小さな企業だったこともあり、後輩をもった機会はわずか1回きり。 その人は、40絡みの男性だった。 くたびれたスーツを着て、どこかだらしなく見えた。 「美味しんぼ」初期の山岡をリアルにしたら…