むかしのこと
月がさえざえとした夜道で、ふと沈丁花の香りをかいだ。 見まわしても、香りの主は見つからない。 甘い香りが、冬の終わりと春のはじまりを告げている。 季節の移ろいに趣を感じると同時に、その香りはわたしの記憶をかきまぜて、沈殿したものを舞い上がらせ…
受験で学んだことがライター仕事のベースになってるって話。小論文の書き方にもちょっと触れてます。
2月22日、猫の日に寄せて、「会ったことのない猫の思い出」を書きました。猫ちゃんに限らず、一度暮らした動物は、家族の心はもちろん、新参者の心にも焼き付く、みたいな話です。
今の気持ちを書きました。 ちいさな悩みにとらわれることは、そうそう愚かなことでもないのではないか、みたいな話です。
眼科に行った、てな話を書きました。 内容はエッセイ的な話ですが、40歳こえたら視野検査は年一ぐらいで受けたほうがよいですよね。
古い革の手帳には、一枚の写真が挟まれている。 大学時代、部活の引退試合を終えて、同期みんなで撮った集合写真。 高校時代まで、わたしは部活とかスポ根とかとは無縁だった。 運動神経も皆無。 団体行動も苦手。 そんなわたしがどうして大学でわざわざ運動…
子ども時代の思い出は、曖昧模糊としたものでくるんでしまうのがいいのかもしれない……みたいな内容を、給食に絡めて書きました。
アンナミラーズ高輪店閉店の報を聞いたとき、胸にブワーッと溢れた思い出を書きつけました。アンミラ、ファミ通、カヒミ・カリィ、SPOT21などについて。
ちいさいころにいまひとつ上手くできなかったシルバニアファミリー遊びの話と、邪道な遊び方をしていたおかげ(?)で触れた親の愛、みたいな話を書きました。
Ingressというゲームのプレイヤーだったころ、魔法にかかっていたなあ……という話を書きました。人はいろんな理由で何かを始めたり辞めたりしますよね。
どうしてお墓参りをしようなんて言ったのか、もう覚えていない。 「そういえば、甲野のおばさんのお墓ってどこにあるのかな」 そう言ったのは、たしかわたしだった。 帰省中で、わたしは時間を持て余していたのだ。 たまに帰省したのだから、親との時間を過…
引っ越しと転職によって、自分が求めているものがはじめてわかった、という思い出について書きました。
ホスピスの思い出を書きました。
明確に後悔している。 人生でそう断言できることは多くはないけれど、パッと思いつくものがひとつある。 それは、「着付けをやめたこと」だ。 きものに憧れていた。 きっかけは、書店で出会った一冊のムック『KIMONO姫』。 KIMONO姫 1 ことはじめ編 (Shodens…
その物件を内見したのは、5月のよく晴れた日だった。 はじめて訪れる郊外の街はとても静かで、遠くから子どもが遊ぶ声が聞こえてきた。 「台所の窓が大きいんですよねえ」 不動産屋の青年が言って窓を開けた瞬間、風がふわあ、と吹き込んだ。 窓の外では、大…
東京に、雪が降った。 窓を開けると、街路樹に、畑に、向かいの民家の屋根に、白いものが積もっている。 キンと冷えてわずかに湿り気を感じる、雪の日特有の空気。 こんな日にいつも思い出すのは、もう10年近く前の年明けのことだ。 年明け早々、北陸に大雪…
海岸沿いの道から、車は山間へと入る。 杉の木だろうか、針葉樹におおわれた斜面がつづき、やがてうねうねとした一車線の坂道沿いに、民家がぽつり、ぽつりと現れる。 古い家も新しい家も、どこも屋根が高く、がっしりとした作り。 能登の積雪に対応するため…
オフィス街の横断歩道を渡る人たちのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20210337085post-34003.html ショートブーツのファスナーを上げる。 と、スライダー(つまみ)がファスナーから外れた。 「ありゃ」 もう捨てるか、と一瞬考える。 何しろこのブーツ…
都会のマンションと雲空のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20200539128post-27326.html はてなブログ10周年特別お題「10年で変わったこと・変わらなかったこと」 10年前の春、わたしは引っ越しをしていた。 ひとりには広すぎる2DK。 郊外の格安物件。 …
フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) photo by すしぱく 人はなんのためにホラー映画を見るのだろう。 安全な場所で、スリルを楽しむため? だとしたら、なんのためにスリルが必要なのだろう。 どきどきすることで、生きていることを実感できるから? す…
そのホームページにどうやってたどりついたのか、もう覚えていない。 なつかしのHTML手打ちタグで作られた「いたばしのホームページ♪」。 トップページにいくつか並んだバナーから、「掲示板」をクリックすると、 多くのひとが集まり、他愛ない世間話や仕事…
コンビナートを見て育った。 朝日は赤と白に塗り分けられた煙突や、巨大なガスタンク、複雑に絡み合った金属製のパイプを照らして昇るものだった。 近所には公害被害者のための療養施設があり、小学校で習う地域史でも、公害問題は大きくあつかわれていた。 …
「時間は一方向に進んでいて、不可逆なものである」。 当たり前すぎるほど当たり前のことが、理解できていなかった。 それほどに、若いというより幼かった。 「もう、この夕日も見られへんのやなあ」 自転車を止めて、兄が言った。 兄とわたしの視線の先、 …
ネット普及以前、我々はどうやってモノを探していたのか。その記憶。
わたしは、ふつうになりたかった。 いまは、フリーランスで仕事をしていて、結婚していて。 自分なりの“ふつう”を手に入れたと、そんな気がしている。 わたしの母は、「父と結婚したのは失敗だった」とよく言っていた。 実際、そう思う。 父は悪人ではない。…
驚いた。 こんな世界があるのかと思った。 20年近く前、春休み直前のころだったと思う。 東京からの転校生が、こう言った。 「カヒミ・カリィって知ってる?」 「えっ、カヒミ……何……?」 耳慣れない名前を、何度か聞き返したことを覚えている。 なんでもその…
オーストリアの首都、ウィーンに降り立ったのは、5月も終わりのことだった。 旅の計画はこうだ。 オーストリアから南ドイツのミュンヘンへ。 そこから少しずつ北上、 北端の海辺の町まで到達したら南下して、 フランクフルトからパリへ抜け、帰国。 航空券の…
もうだいぶ前になるが、友人が結婚した。 挙式は、オーストラリアで。 当然、出席した。 中高生のころから彼女は、 「わたしは、結婚して、子どもを生んで、将来おかあさんになる」 と断言していた。 「まあ、いつかは子どももほしいし」 「やさしい旦那様と…
まず、「ツチノコ」の話をしよう。 もし、世界に「ツチノコ」という概念がなかったなら。 当然、「ツチノコ」を捕まえようとは思わないだろう。 そして、仮に「ツチノコ」を見ても、特異な存在とはわからないはずだ。 「ちょっと太った蛇がいるわ」などと思…
運動はとんとできない子どもであった。 暗い顔で、本ばかり読んでいた。 そんなわたしが大学に入ってすぐ、部活動に入った。 大学公認の、純然たる体育会系である。 比較的新しい競技なので、ややゆるい雰囲気ではあるものの、 それなりのしごきもある。 先…